【バーティカルSaaS】スパイダープラス 元断熱工事の建設業者が産み出した業界トップの建設業SaaS(4/4 ページ)
かつて3Kと呼ばれた建設業の働き方をデジタルで変革しつつある企業がある。建築図面・現場施工の管理アプリ「SPIDER PLUS」を提供するスパイダープラスだ。「生産性の低さは下から数えた方が早い」と言われてきた建設業界に、スパイダープラスはいかにしてDXの風穴を開けることができたのか。
PSR30倍の要因と今後の成長戦略
――(取材時点で)時価総額674億円、PSR(時価総額が売上高の何倍かを示した指標)もSaaSではfreeeにつぐ30.4倍と非常に高い評価を受けています。どのように受け止められているでしょうか。
長期的な成長への期待はまさに実感しているところです。バリュエーションなどについては意見を出す立場ではありませんが、現在の企業価値は長期での成長を見込み、足元でも高マルチプルを許容することができる海外投資家からの評価が大きいと思っています。
―― IRでの開示資料中、SaaS KPIの公表がかなり詳細に行われていますが、そのような背景ともかかわりがありそうですね。
IPOに当たっては旧臨時報告書方式で海外投資家からも調達を行いました。そのコミュニケーションに当たり、SaaS KPIの開示も海外SaaS企業などからのスタディを続け、当社が公表するIR資料の中でも多くの項目を開示するに至りました。
その甲斐(かい)もあり、海外投資家の強い関心の高まりを感じています(5月19日には英国の機関投資家クープランド・カーディフ・アセット・マネジメントが5.02%を取得した大量保有報告書を公表している)。
―― このような株価は高い成長期待への現れと考えられますが、今後の成長戦略をどのように考えていますか。
まずは既存の建設業向けの市場を取りつくす勢いで成長し、5年以内にはARR100億円を達成したいと考えています。
成長加速に向け、既存領域以外でも図面や写真管理を必要とするプラント建設領域など、このサービス価値を、(業界をまたぐ)ホリゾンタルに広げていく展開を進めています。
バーティカルSaaSは多様なニーズが際限なくあり、多くのプロダクト改善を行っていく必要がありますが、このようなユーザーの声と向き合うからこそ定着率が上がってきます。IPOで得た資金調達はそのような改善を行っていくため、ヒトに対する投資を積極的に行っていきたいと考えています。
記事中のデータについて
本記事を執筆するアナリストが運営する「企業データが使えるノート」では、記事中のARR内のデータなどSaaS企業に関するKPIデータや財務、バリュエーションデータ等を独自の分析を交えnote内で提供しています。
企業データが使えるノート
「アナリストにSaaS企業分析・データ作成をアウトソースできる」をコンセプトに、記事中のARRやARPUといったSaaS KPIデータのダウンロードができるなどの独自コンテンツを配信。
最新情報はTwitterで発信中 企業データが使えるノート @CraftData2
関連記事
- 【解説】バーティカルSaaS 国内でも盛り上がりの兆し
最近、注目を集めている“バーティカルSaaS"という言葉を聞いたことがあるだろうか。業界を問わず利用されるクラウド型のシステムは、部署や部門の課題を水平的にカバーすることから“ホリゾンタルSaaS"と呼ばれている。一方「建設」や「不動産」など、特定の業界に根付いた課題を解決するシステムは、垂直を意味する“バーティカルSaaS"と呼ばれ、徐々に認知が広まってきている。 - ユニコーン企業となったSmartHRは、どれほど規格外なのか?
足元のARRでは45億円まで伸張しており、新興市場マザースで上場を行うことが可能な水準であるARR10億円を超えている。ARRの絶対額もさることながら、前年四半期ベースで100%を超える成長を見せている点が驚異的だ。2年以内にARR100億円の大台を突破する可能性が高く、過去の国内SaaS企業にはない圧倒的な成長力だ。 - 3年で2.4倍の売上高 ラクスのSaaS最強決算
国内SaaS領域で最高益を叩き出した企業がある。経費精算システム「楽楽精算」や電子請求書発行システム「楽楽明細」などのSaaSプロダクトを提供するラクスだ。5月13日に公表した2021年3月期決算発表では、売上高153億円(前年同期比32.6%増)、営業利益38億円(前年同期比232%増)と他社を圧倒する利益水準となった。 - SaaS企業の時価総額はなぜ高いのか?
この数年、SaaS企業は新興企業向け株式市場マザーズのIPOにおいて大きな存在感を見せています。新興市場のけん引役ともいえるほど躍進をしたSaaS企業ですが、果たしてこの勢いは、21年以降も続いていくのでしょうか。 - ビジネスパーソンのためのSaaS KPI入門
ビジネス用語として定着した“SaaS”ですが、このビジネスを理解する上で欠かせないのが「SaaS KPI」と呼ばれる指標です。この記事では、SaaSビジネスにおいて、国内トップランナーであるfreeeの決算説明資料を基に、ビジネスパーソンが最低限押さえておきたいSaaS KPIの解説を行っていきます。 - IPOを選ばなくなったスタートアップ
時価総額が10億ドル(約1000億円)を超えていながら上場しない、いわゆるユニコーン企業が話題になって久しい。そこまでいかなくとも、IPOをゴールとせず、未上場のまま資金調達を進めるスタートアップが、国内でも増えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.