山善の焼肉グリル「XGRILL」が売れている、人気の秘密は?:あの会社のこの商品(2/5 ページ)
家の中で焼き肉をやるのは、理解が得られにくい。やはり、においの問題が大きいが、山善はこの課題に正面から向き合い、解決策となる商品を開発。それが現在、想定を上回るペースで売れている。
ホットプレートより煙の発生、油はねが少ない上に、おいしく焼ける
近藤氏は中国の協力工場に相談。企画のコンセプトや実現したいことなどを伝えたところ、現在のXGRILLに採用されている構造が提案される。
構造の特徴は、まず火力が弱くならないように、ヒーターと網状のプレートを一体化。プレート裏面にヒーターを直付けし、熱を伝わりやすくした。また、網の表面を曲線形状、裏面を立体的なX形状とした。曲線形状とすることで油が下に流れやすくなり、流れた油は立体的なX形状によって一点に効率よく集まり、水を張ったトレイにしたたり落ちるようにした。
「プレート表面のカット構造を工夫しているグリルは以前からありましたが、XGRILLは裏面をX形状にカットしていて、油がさらにしたたり落ちやすいものになっていたので、私の中では『これはイケる!』という手ごたえがありました」と近藤氏。20年4月末、自社のホットプレートと中国から届いたXGRILLの最初のサンプルで肉を焼き比較検証したところ、煙の発生量、油のはね具合ともに、満足のいくレベルに抑えられたことが確認できた。
また近藤氏は、煙の発生、油はねが予想以上に抑制されたことに加え、格段においしく焼けたことに驚いたという。平面のホットプレートで肉を焼くと油がたまって、焼くというより揚げる感じになってくるが、XGRILLで肉を焼くと余分な油が落ち、焼き上がりが柔らかくなったためであった。
比較検証はこの1回のみ。開発はさぞ順調に進んだかのように思われるが、中国の協力工場では3カ月ほど、何度もサンプルをつくることに。より多くの油がしたたり落ちるように、X形状の角度を繰り返し見直すなど、山善が求めるクオリティーのものができるまで試作開発を続けた。
XGRILLは当初、5月には発売する予定だった。「ゴールデンウィークあたりになると、スーパーでは焼き肉に関する販促を始める傾向にあるので、本当はこれに間に合わせるつもりでした」と振り返る近藤氏。開発が難航したことと、新型コロナウイルスの感染拡大によってサンプルをマメにチェックできなかったことなどにより、発売がやや遅れることになった。
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