山善の焼肉グリル「XGRILL」が売れている、人気の秘密は?:あの会社のこの商品(4/5 ページ)
家の中で焼き肉をやるのは、理解が得られにくい。やはり、においの問題が大きいが、山善はこの課題に正面から向き合い、解決策となる商品を開発。それが現在、想定を上回るペースで売れている。
「野菜を炒めたい」という声から生まれた「XGRILL +PLUS」
ただ、発売からしばらくたつと、ユーザーから「野菜を炒めたい」「食べ盛りの子どもがいると小さい」「平面プレートと交換できないか」といった声が聞かれるようになった。こうした声を受けて20年10月、網状のプレートと平面のマルチプレートを一体化した「減煙焼き肉グリル YGMB-X120」(以下、XGRILL +PLUS)を企画し、21年4月に発売した。価格は「くらしのeショップ」で8000円。
交換用の平面プレートを用意するのではなく網状のプレートとマルチプレートを一体化したのは、交換用の平面プレートだと網状のプレートと同じくヒーターと一体化した構造を採用しなければならず、コストがかかる上に重くなって使い勝手が落ちるため。そのため、全体的に大きくし網状のプレートとマルチプレートを一体化する形をとった。マルチプレートは野菜を炒めたりすることのほか、チーズを溶かしてチーズフォンデュやチーズタッカルビをつくるのにも使うことができる。
開発はXGRILLで採用した網状プレート表面の曲線形状、裏面のX形状を受け継ぎつつプレートサイズを拡大。XGRILLのプレートは幅300×奥行200(単位ミリ。以下同)だが、XGRILL +PLUSは幅383×奥行232であり、そのうちマルチプレートは幅80×奥行232となっている。
XGRILL +PLUSはこのほかにも、XGRILLから変更した点が2つある。1つが、網状プレートの淵に傾斜をつけ、油がたまらないようにしたこと。XGRILLはプレートの淵が平面で油がたまりやすくなっていたことを受け改良した。
もう1つが、網のすき間。XGRILLは幅8ミリだったが、5ミリにしている。すき間を狭くしたことで、小さな肉片が下に落ちにくくなっている。
これら2つの変更により、XGRILL +PLUSは煙の低減率が約80%に向上する。すき間の幅が狭くなって数が増えたことに伴い、余分な油がより効率的に落ちるようなったためだ。油はねの低減率についてはXGRILLと同等で、約83%となっている。
「XGRILL」のプレートの淵(左)と「XGRILL +PLUS」のプレートの淵の比較。平らな「XGRILL」と異なり「XGRILL +PLUS」はゆるく傾斜しており、網のすき間から下に油が落ちやすくなっている
平面プレートとの比較検証は1回で済んだが、プレートのデザインについてはマルチプレートの使い勝手がよくなかったことが理由で、発売直前まで手直しが入った。「サンプルは四方の縁の立ち上がりが低く、野菜などを炒めるとこぼれることがありました」と近藤氏。当初の立ち上がりは高さ6ミリほどだったが、現在は12ミリ。バターを溶かすような使い方をしてもこぼれる心配がなくなった。
XGRILL +PLUSの売れ行きは、今のところ好調。価格がXGRILLよりアップしているが、初速はXGRILLと同じだという。XGRILLより使い方の幅が広がって、より便利になったことが好調さにつながっているようだ。
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