「ブラック校則」で波紋 今の日本社会で、ツーブロックは本当に就職で不利なのか:「異形」か「個性」か(4/5 ページ)
「就職活動に影響する」とツーブロックを禁止する学校が話題に。本当に髪形程度で就職に不利になるのか。そんな社会でよいのか。
それは、ダイバーシティ&インクルージョンの推進です。
性別や障がい、年齢、国籍、人種、嗜好などさまざまな違いを異端視し差別的に捉えるのではなく、違いをそれぞれの“個性”と捉え、多様な個性を有する人材が能力を生かせる社会や組織にしていこうとする考え方は、企業活動の中にも徐々に浸透しつつあります。
画一的であることを良しとする組織においては、“違い”があることは良くないこととして受け止められがちです。しかし、“違い”を“個性”として捉えるようになれば、他の人には備わっていない能力にも目が向きやすくなり、その“個性”は“魅力”へと変わります。
冒頭で紹介した記事の「ツーブロック禁止」や、地毛が茶色なのに黒髪に染めるよう強要するような校則などは、「就職に影響するため」などという理由をどうこう述べる以前に、“違い”を“個性”ではなく、“異形(いぎょう)”として排除する考え方へと導いてしまっているように感じます。その点、髪形を“個性”の一つとして捉えているPANTENEのキャンペーンなどとは対照的です。
学校教育と企業活動とは、本来目的自体が異なるものです。そのため、必ずしも歩調を合わせなければならないものではありません。しかし、学校教育の段階で、“違い”を“異形”として捉えるような価値観に染まってしまうと、時代変化への対応が遅れたり、多様性を受け入れる考え方との間に矛盾が生じてしまう懸念があります。
そして何より、差別意識を助長してしまう危険性さえ感じます。企業が必要とする人材像自体が変わろうとしている中で、「就職に影響するため」とツーブロックのような一般的な髪形を禁止する、古い価値観にひもづく理由にいつまでも固執するようなスタンスでは、時代にどんどん逆行していくように見えます。
教育現場においては、教師が教える立場であり、生徒が学ぶ立場です。しかしそれは、教師が学ばなくても良い、という意味ではありません。また、会社組織においても、部下を指導して育成する立場にいる上司は、上司としての役割を果たすために自らが積極的に学び続ける姿勢が求められます。
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