「日本人の魂」を買われてはならない――僕がパナソニックに行く理由:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 パナ新CIOの本音【後編】(3/3 ページ)
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命保険でCIOを務め、5月にパナソニックのCIOに就任した玉置肇氏。外資企業でキャリアを積んだ玉置氏が、歴史ある日本企業=パナソニックに入社した背景とは? そこには、熱い思いがあった──。
長谷川: 具体的にはどのような施策をすると良いでしょうか?
玉置: 「女性を輝かせる職場」って標語、あれは少し違うと思っています。女性が働きやすいと男性も働きやすいんですよ。つまり、みんなが働きやすい職場を作ったらいいと思うんです。
「ゼロ・トレランス(規律違反を許容せず、厳しく罰すること)」という言葉あります。何を許容しないかというと、年齢、性別、宗教、人種、国籍といったものによるハラスメント。多様性を受け入れる職場を作らないといけない。ポーズだけではダメ。いかに優秀な人材でも、ハラスメントをしたら許さない。
フラットでオープンで、みんなが安心して働ける職場がなぜ大事なのか。それは、一人一人のポテンシャルが完全に解き放たれるからです。日本はやはり同質・同調社会でハイコンテクストなので、一人一人のポテンシャルが解き放たれていないケースが多いんです。
余計な忖度はもういらない。「上司に遠慮しなきゃいけないのはなぜ?」「このITベンダーと付き合う合理的な理由は?」というもやもやを解消できれば、変革はすぐに進みますよ。
老け込むには、まだ早い
長谷川: 玉置さん今おいくつ?
玉置: 53歳です。
長谷川: 人生100年時代。これからどんなふうに年を重ねていきたいですか?
玉置: 「軽んじられる人」がいいね。
年と重ねると、やっぱりみんなちょっと偉そうなってくるのね。それってよくないと思うんです。いつまでも軽んじられて、20代、30代の方からもタメ口をきかれるくらいの方が絶対にいい。70代になった頃、長老なんて呼ばれるようになったら最悪です。
筆者: それはすごく伝わってきます。玉置さん、接しやすいですもん。
長谷川: 僕はちょっと長老とか呼ばれてみたいけどな(笑)。
玉置: 僕ら、組織内ではだいぶ年長になってきましたが、老け込むにはまだ早い。
自分のやってきたこと、自分の持っているものを悔やんでも嘆いても仕方がないんです。僕はサルの研究を諦め、この職業に出会いました(前編参照)。今あるものを愛する。どういう立場でどんな仕事をしていようとも、今あるものに感謝し、大切にすること。
僕の座右の銘は3つあります。1つは、徳川家康が言った「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず」。2つ目は、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」。
最後3つ目に裏があるんです。それは夏目漱石の言葉「さううまくはいかないよ」。人生って、そううまくはいかないんです。常にトラップがある。だけどね、それを楽しみながらやっていけたらいいなと思っています。
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