ライオン流「働きがい」改革 “成長につながる”副業とは?:労働時間管理の工夫も(3/5 ページ)
消費財でおなじみのライオンは、2019年7月からライオン流「働きがい改革」を推進している。今回主に取り上げる副業も働きがい改革の重要な要素の1つである。その副業も社員が他社で働くだけでなく、他社からの副業者も受け入れている。
「労働時間の提出」も 社員の健康を考えた副業ルール
副業が本格解禁となったのは20年1月。従来は許可制で件数自体も少なかった。例えば研究職の社員が、大学の非常勤講師をしているというケースはあった。
現在では副業は事前申告制となっている。まず「副業申告シート」に副業先の名称や所在地、仕事内容などの必要事項を書き込み、社内ルールを逸脱していないかを確認したら、それを人材開発センターに届けるという手順を踏む。
副業をする際はいくつかのルールや注意点がある。
ライオンの副業ルール
- 同業他社、反社会的勢力、風俗業などで働くことは許されない
- 副業は就業時間外に行う
- 副業先での労働時間は週に20時間未満とする
- 22時以降の副業は原則禁止。次の勤務に就くまでに10時間以上のインターバルを確保する
- 週1日は休日を取る
- 新卒入社者はライオンの仕事に慣れるのが先決なので、勤続3年以上でなければ副業不可(キャリア入社者は勤続年数を問わない)
- 副業での年収が20万円を超える場合は自分で確定申告を行う
これらのルールや注意点とともに、厚生労働省の副業・兼業に関するガイドラインで示している労働時間管理や健康管理などについてクリアすることも考慮している。
「例えば労働時間を副業も含めてトータルで管理することがガイドラインで示されているので、会社が副業先での労働時間の提示を求めたときにはすぐに提出できるようにと定めています。それができないときは副業を中止させることもあります。また健康管理については副業も含めて長時間の時間外労働にならないように配慮しています」
労働時間の管理や健康管理に細心の注意を払いながらも、同社は副業推進を大いに後押しする。
副業を許可制から申告制へ切り替えて新たな副業制度をスタートさせたのが、ちょうど新型コロナが話題になり始めたころだった。そのため、リストラ策の一環ではないかといぶかしく思われることもあったようだが、ここまでみてきたように、ライオンの副業は働きがい改革の重要な施策である。
「会社の外でしかできない体験を積み、能力を伸ばしてほしいというのが副業解禁の本意です。会社としては積極的に外とつながって、外から刺激を受けてほしいというスタンスです。外とのつながりで最たるものが副業です」
関連記事
- カルビー流「“総務主体”ではない」オフィス作り 営業がリーダーを務めた理由
カルビーは丸の内オフィスのリニューアルのため、社内横断のプロジェクトチームを組織した。社内横断チームといっても、オフィスに関することなのでやはり中心は総務──と思いきや、リーダーを務めたのは営業の社員だった。マーケや情シスなど、さまざまな部署のメンバーと作り上げた意味とは? - 「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのか
「来年度の目標は、残業時間ゼロ」──社長の突然の宣言は、まさに寝耳に水の出来事だった。準備期間は1カ月。取り組み方は、各部門に任せられた。現場はどう対応したのか? - 東急、男性育休率が2%→80%に! 「社員に本気を見せる」ため、人事がしたこととは?
2015年、東急は「男性育休100%」を目標に掲げた。14年度は2.1%だった取得率を順調に伸ばし、20年度の実績は80.0%に。人事担当の男性社員すら「育休を取るなんて考えもしなかった」という社風を、どのように改革していったのか。 - 施行まで半年を切った「改正・電子帳簿保存法」、改正のポイントは?
令和3年度の税制改正で、電子帳簿保存法が改正された。令和4年(2022年)1月1日の施行まで半年を切るなか、担当者は改正への対応を進めていく必要がある。今回の改正の主なポイントは? - 育休法改正でこう変わる! 「全社的に説明」のみはNG、人事がすべき“準備”とは?
6月3日、改正育児・介護休業法が成立した。今回の法改正の要点や、人事が今から進めておくべき準備とは? Works Human Intelligenceの阿弥毅氏に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.