多くの企業が取り組む「スキャンで紙をデジタル化」がダサい理由:経理業務のあるべき姿と未来を探る(2/3 ページ)
多くの企業が電帳法対応で取り組む「紙書類のスキャン」だが、それを「ダサい」と指摘するのが、中小企業の経理業務に詳しい税理士の杉浦直樹氏だ。簡単にデジタル化できるスキャンが、いったいなぜダサいのか。
この点について、杉浦氏は「紙書類・証憑のスキャンは、『1つ飛ばし』の技術であることに注意が必要です」と話す。どういうことか。このことを理解するには、そもそもなぜ、紙書類をデジタル化するのかという点、ひいては証憑というものを理解する必要がある。
証憑の本義は「適切性の証明」
杉浦氏は、証憑について「取引の対をなすもの」と表現する。つまり、どんな取引をしたのか、どんなものを買ったのか、そうした会計・税務処理の一対として、適切性を証明するものということだ。
「経理・会計の目的は、企業の状況を外部に説明することだと捉えています。その上で、広義にはワークフローも証憑の一部だと考えています。請求書など、狭義の証憑となる前段階である稟議まで含めて見なければ、会計の適切性は担保できません」(杉浦氏)
従って、請求書など紙書類のスキャンは、紙のフォーマットをそっくりそのままデジタル化するだけであり、「紙→デジタル化」の流れの中にあるべき、「適切性の証明」という観点が抜け落ちてしまっている。この点から、杉浦氏はスキャンを「1つ飛ばし」と表現したのだ。
一方で、杉浦氏は「結論として、スキャンはやった方がいい」とも話す。あくまで税務要件を満たすためだけのスキャンが「ダサい」のであって、会計データと証憑を結び付けることは、外部から会計や税務処理を検証する際に役立つだけでなく、経営者の解像度も高まるからだ。
その上で、スキャンする際の注意点について、「大事なのは紙書類を“幽体離脱”させることです」と杉浦氏は話す。
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