来年から「一部上場企業」は無くなります……呼び名変更「プライム」化で何が変わるのか:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
東京証券取引所は2022年4月4日に、これまでの「東証第一部」「東証第二部」「マザーズ」「ジャスダック」といった市場区分から、「プライム」「スタンダード」「グロース」という新たな市場区分へ移行する。「現在、東証一部に上場している銘柄がスタンダート市場に入ってしまうのか」という点と、「東証第一部に連動している株式指数のTOPIX(東証株価指数)はどうなるのか?」という点に注目したい。
今東証第一部に上場している会社もスタンダード入りする?
現在東証第一部に上場している会社であっても、プライム市場の上場基準を満たせなかった場合はスタンダード市場の指定となるため、実質的な「格下げ」となる。上場基準は流動性・ガバナンス・経営成績および財政状態という3つの観点で評価されるが、現在東証第一部にある銘柄が最高位のプライム市場に残るかどうかについては以下の点を重点チェックしたい。
まず確認すべきは株式の「売買代金」である。プライム市場では、1営業日あたりの平均売買代金が2000万円以上であることを求められている。21日時点のデータを確認すると、全東証第一部上場企業の2割弱に相当する457銘柄が、売買代金2000万円位を下回っていることが分かった。
その中には、地方銀行株や放送局株、鉄道株など、誰しも一度は聞いたこともある企業も数多く名を連ねている。東証第一部企業の売買高ランキングの下位をチェックするなどして、事前にスタンダード入りしそうな一部上場企業を見極めておきたい。
次に注意すべき点が流通株式比率だ。プライム市場ではガバナンスの観点を重視している。投資家との建設的なコミュニケーションが阻害される恐れがあることから、安定株主が3分の2以上の保有を許さず、外部投資家が最低でも35%以上保有すべしという趣旨の流通株式比率を求めている。
この基準は、主に親子上場の子会社にとって大きな課題となっている。例えば、ゆうちょ銀行は親会社の日本郵政が89%保有していることが痛手となり、今月9日にはプライム市場の指定がない旨を東証から直々に言い渡された。本連載シリーズの過去記事でも、親子上場解消の動きがある点を触れていたが、東証市場再編による実質的な市場区分の格下げをきらった動きもその要因の1つなのかもしれない。
経営成績・財務状態については上場維持基準が「債務超過していないか」という点のみ記載されていることから、依然として「入るは難し、残るは易し」なきらいはある。したがって、来年4月の市場再編以降は、主に売買代金と流通株式比率に気を配ることになる。
ちなみに、今年だけでもマネーフォワードやSansanのようにマザーズ市場から東証第一部への指定替えを果たした銘柄が8つほどある。今年東証第一部に新規上場、ないしは指定替えされた銘柄も、再度の審査を経てスタンダード市場入りすることはあるのだろうか。
基本的にこれらの銘柄は市場変更と同時にプライム市場に指定されることになる。なぜなら、今年東証第一部に新規上場・市場の指定替えした銘柄は、すでにプライム市場を見据えた基準で審査が実施されているからだ。
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