売れすぎて入手困難に! なぜ無名ブランドの「ガトーショコラ」は人を魅了するのか:完売が続く(5/5 ページ)
2020年10月の発売以来、9カ月連続で完売状態が続いているガトーショコラの店がある。名古屋と東京に店を構える「THE chocola(ザ・ショコラ)」だ。オーナーシェフに、開発の経緯や企業戦略を聞いた。
影で支える敏腕プロデューサーの存在も
「THE」には、澤田氏のほかに裏方に徹するプロデューサーがおり、彼の存在もブランドを構築するうえで欠かせないとのこと。その人物は、広告代理店「ORIGINALS(オリジナルズ)」の代表を務める藤本敏寛(ふじもと・としひろ)氏で、仕事を通じて出会ったそうだ。
「藤本に『澤田さんは人脈があるし、人柄もいい。絶対やれるよ』と背中を押してもらい、新たな一歩を踏み出すことができました。商品製作とコミュニケーションは私が担っていますが、ブランディングは藤本が仕切っています。ザ・ショコラのキャッチコピーやデザイン周り、店舗設計などを一手にまとめてくれ、本当に大きな存在です」
感性で動く澤田氏に対して、戦略的なビジネス展開を得意とする藤本氏は、不足部分を補うパートナーとして最適なのかもしれない。藤本氏にも話を聞くと、「飲食業界の過重労働や低賃金の課題を解決したい」と、澤田氏とは異なる視点が見られた。
「商品の質を担保するために価格設定を高価にし、本当にスイーツが好きな人のみをターゲットとしました。その結果、マーケティングコストの削減、生産効率の向上に加え、廃棄ゼロを実現。当社がロールモデルとなって、飲食業界の課題解決につながればと考えています。より広い視野では、一次産業から三次産業すべてのサプライチェーンが利益を享受できるよう、適正価格で仕入れを行い、生産者に還元することを目指します」(藤本氏)
インスタグラムの訴求力に加え、メディア露出を順調に獲得できたために、これまで広告は一切使っていないそうだ。
澤田氏に今後の展開を聞いてみると、新作スイーツを試作中とのこと。しかし、「THE」は食に限らず、食にまつわるあらゆるものとコラボレーションして、横展開を図りたいと展望を語った。
「例えば、食事をするテーブル、イスなどのアイテムをTHEのブランドで展開し、一緒に販売していきたい。質の良いものをつくっていても、売ることに課題がある人は多いと思うんです。THEを使って良いものを広めていけたらと思っています」
取材を終え、店を後にする際、何度もおじぎをして丁寧に見送る澤田氏の姿が印象的だった。ザ・ショコラの人気は、商品力もさることながら、澤田氏が数年かけてコツコツと積み上げてきた「人とのつながり」が支えているに違いない。
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