サブカルと広告業界と東京五輪開幕と:コンプレックスがある(1/2 ページ)
1986年に広告業界に足を踏み入れた筆者は、東京五輪2020の開幕式をどう見たかのか。まとめたくなったので書いてみた。
著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)
有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。
“ルサンチマン”という言葉がある。恨みの念のこと。ニーチェは、強者に対し仕返しを欲して鬱結(うっけつ)した弱者の心だと表現している。
東京五輪の開幕式典が直前までゴタゴタしている。椎名林檎や野村萬斎が率いた制作チームは、コロナ禍の中で、D通さんの仕切るチームへと移行した。そこで集められた人材は、小山田圭吾にしろ、小林賢太郎にしろ、いわゆるメインカルチャーではなくサブカルチャーの逸材たち。アラカンのワタシも、その筋の流行には遅れまいとベンチマークしてきた人たち。そんな愛した人間たちが、今日も批判の矢面に立っている。
なぜ、そんなサブカルな人材を東京五輪の表舞台に立たせるのか!? D通さんのお友達の寄せ集めではないか!? と批判が集まっている。
擁護(ようご)するわけではないのだけれど、同じ時代を生きてきた人間として、よくわかるんだよなぁ……。広告代理店に勤めるクリエイターの多くは、みんな”ルサンチマン”を抱えているのである。大小はあるものの「所詮、広告……」「所詮、代理店……」というコンプレックスがある。それはD通さんとて同じである。いや、むしろD通さんにお勤めの方々ほど、超一流に対しての”ルサンチマン”は大きいのかもしれない。
広告は、どうあがいてもメインカルチャーではない。広告とは、そういうものである。
先人の代理店マンたちは、ずっと、そこと戦ってきた。言い換えると、超一流に寄り添うことによって、溢れ出てくる”ルサンチマン”をなんとか手なづけてきたわけである。強烈なカウンターカルチャーにもなれない弱者の心をいつも宿して。ワタシとて同じ穴の狢である。
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