マツキヨ・ココカラ不振の裏で、「肉・魚・野菜」の販売にドラッグストア各社が乗り出す納得の理由:小売・流通アナリストの視点(4/6 ページ)
コロナ禍の追い風が吹いたドラッグストア業界の中でも、売り上げ減だったマツキヨ・ココカラ。その背景には何があったのか。また、ドラッグストア各社でなぜ、「生鮮食品」の販売が広がっているのか。
食品強化型ドラッグストアが抱えるメイン顧客のイメージは、軽自動車に乗って通勤する共働き世帯の主婦層であり、とにかく時間がない。子育て中の共働き主婦はとにかく忙しく、朝から晩まで仕事と家事に追われているので、消耗品の補充といったルーティーン作業は短時間で済ませたいという人が大半なのだ。その場合、大型スーパーの広大な駐車場、多層階で広すぎて移動時間のかかる売り場、などは、全てNGだ。
店前の平置き駐車場にサッと止めて、食品スーパーより少し小さめのワンフロアを一周して今日の補充品が全てそろう、という時短を実現している食品強化型ドラッグストアこそ、こうしたターゲットを捉えているのである。
こうしたオールマイティーな生活必需品ワンストップショッピングニーズに最も適している食品強化型ドラッグストアにとって、唯一の弱点は生鮮食品の取り扱いだといっていいだろう。
生鮮食品は鮮度管理とロス管理が難しく、このノウハウに関して絶対的な強みを持っているのは食品スーパーであることは、いうまでもない。鮮度を重視するといわれる日本の消費者のニーズに対応するためには、生鮮売場の背後に一定規模のバックヤードを設けて、その日提供する商品は当日、流通加工(顧客単位に切り分けて、パック詰めするなどの最終加工)をするのが一般的なやり方なのだが、この手法は店舗ごとのバックヤード設備と加工人員というコスト負担がばかにならない。
その上、生ものであるがゆえに、売れ残れば廃棄ロスに直結するリスクがあるため、スーパー以外の店が簡単にコピーできるノウハウではないとされている。こうした理由から、食品強化型ドラッグストアの大半が、生鮮を除いた食品提供(メーカーが作った食品)にとどまっているため、生活必需品ワンストップが完全実現されているわけではないのが現状だ。さまざまな企業がこのハードルをどのようにして超えるかについて、チャレンジを繰り返している最中だといっていいだろう。
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