なぜ? なかなか増えない女性管理職 ファクトで読み解く「歪さ」と「根深さ」:政府目標も後ろ倒しに(3/4 ページ)
朝日新聞記事で、「女性活躍」を報じるメディア側でも、女性管理職比率が低いことが明らかとなった。2020年までに30%という目標達成が、30年に後ろ倒しされる中、どうすれば女性活躍は進むのか。
以下は、先にご紹介した労働力調査と男女共同参画白書をもとに、20年の「正社員」男女比率と「役職別」男女比率を並べたものです。
左から順に、「正社員」「係長級」「課長級」「部長級」と比率が下降していることが分かります。一見すると役職が上がるにつれて比率が下降していくのは当たり前のように思ってしまいそうですが、これは「男女比率」のグラフであることに注意を向ける必要があります。
昇格基準において、意図的に性別による差を設けていないのであれば、役職が上がったとしても、理屈上は男女の比率に大きな変化は生じないはずです。しかし、女性比率は役職が上がるにつれて下降し、逆に男性比率は上昇しているのです。
このような現象は、なぜ起きるのでしょうか? 「女性の意思」「女性の能力」「職場の人員構成」「職場の偏見」の4つの観点から考察してみたいと思います。
(1)女性の意思
管理職になれるだけの実力があったとしても、女性自身が管理職になることや昇格を望まなければ、管理職として昇格する人の比率は下がりそうです。しかし、男性の中にも管理職になることや昇格を望まない人はいるはずです。役職が上がるにつれて女性比率が下降しているということは、昇格を望まない人の比率が、男性よりも女性の方が高い可能性があるということになります。
もし、男性よりも女性の方が昇格を望まない人の比率が高いのだとしたら、それが女性特有の“志向性”なのでしょうか。そう断じてしまうのは早計です。“家事や育児”が与える影響について考慮する必要があるからです。
多くの家庭において、主に家事育児を担っているのは女性です。家庭内の空気が、家事育児の主体は女性という“暗黙の役割分担”意識に支配されている場合、職場から管理職になることを打診されたとしても、女性は必然的に家事育児にかかる負担も考慮して意思決定することになります。
本当は管理職へのチャレンジに魅力を感じていたとしても、家事育児の負担が変わらなければ、簡単には引き受けられません “家事育児の主体は女性”という性別役割分業が、女性を「管理職は望まない」と意思決定させる方向へと追い込んでしまっている可能性があります。
(2)女性の能力
「女性は感情的」「女性は視野が狭い」などの理由から、「女性は管理職に向かない」という声を耳にすることがあります。もしそれが事実であれば、女性管理職比率が低い客観的根拠となるはずです。しかし、当然ながら男性も感情的になることがありますし、視野が狭いといわれる男性もたくさんいます。それらの要素はあくまで個人のパーソナリティーであり「女性は」と性別でくくることに無理があります。
国内外を見渡せば優秀な女性リーダーがたくさん存在しています。そのこと自体、女性が管理職として活躍できる能力を有している確固たる証明です。「女性は管理職に向かない」と決めつけるのはナンセンスです。そのような誤った思い込みが管理職登用や昇格に悪影響を与えてしまわないか大いに憂慮されるところです。
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