売り切れ続出の「ファミマソックス」はなぜ誕生したのか 目指したのは“雨でぬれた時に買う”商品からの脱却:日本人の生活様式を変えたい(3/4 ページ)
今、若者の間で「ファミマの靴下」が売れている。ファミリーマートが展開する「コンビニエンスウェア」の一つ、「ラインソックス」だ。なぜファミマは衣料品の展開に力を入れたのだろうか。
社内の人間では気付かなかった3本線の「アート」
コンビニエンスウェアは現在70アイテムを展開。その中でもひときわ話題となっている商品が、先述した「ラインソックス」だ。ありそうでなかったファミマの靴下。吉村氏は「共同開発した落合氏ならではのこだわりがあった」と話す。
「毎日ロゴを見ているファミマ社員にとって、この柄を展開することはある種の挑戦で、社内では「ベーシックな商品しか売れないのでは」といった声もあった。しかし落合氏は、『3本線でファミマだとイメージできるデザインはカルチャーに近く、それだけでアートになっている』との感覚を強く持っていた。議論を交わす中で、ブランドを象徴する商品として展開することになった」
同社の「挑戦」だったラインソックスはSNSを中心に話題に。20年に関西エリアで先行発売した際には「ファミマがファミマ柄の靴下売ってるの良すぎる」というツイートに5万件以上のいいねがついた。
全国展開以降は、一時品切れする店も相次ぎ「数軒回ってやっと発見した」といった声や、中高生を中心に友人と「おそろいコーデ」を楽しむ写真が多く掲載されている。インスタグラムでは「#ファミマソックス」とタグ付けした写真が3700件以上投稿され、TikTokでは500万回以上再生されている。
そのような影響もあって、インナーの購買層に変化が出てきている。先述した通り、これまでは金曜、土曜の深夜に40〜50代の男性の購入率が高かったが、インナーソックスなどは土日の売り上げが大きく、より若い層の購入が目立つようになった。
また、アウターTシャツも、テレワークの普及によるビジネスウェアのカジュアル化が後押しし、売り上げは好調だ。SNSで話題となった商品や世界的デザイナーのアイテムが仕事や学校帰りに立ち寄るファミマで買える。このような利便性もあって、「何でもいいからその場しのぎに買う」ものから「欲しい商品だから買う」といった流れに変化しつつあるようだ。
関連記事
- ファミマのコスメは半年で30万本超の売り上げ セブンやローソンはどう対抗? コンビニが化粧品売り場に力を入れる理由
コンビニの化粧品売り場に異変が……緊急需要を満たす商品から新しいニーズに対応する商品へと変化している。なぜ化粧品売り場に力を入れるのか - 開店1カ月目で黒字達成 「24時間無人」の古着店 店員不在でも支持されるワケ
東京都中野区にちょっと変わった古着店がある。24時間営業で店員がいない店、その名も「ムジンノフクヤ」 - ドーミーインのこだわりは「大浴場」だけじゃない 店舗数拡大でも維持する「水風呂」と「朝食」の質
共立メンテナンスが運営するビジネスホテル「ドーミーイン」。大浴場のこだわりにとどまらず独自サービスを展開している。 - 「美白」や「はだいろ」が消える 日本は世界の動きについていけるのか
花王が「美白」表現を取りやめると報じられた。この動きは多様性に配慮したもので国内企業では初めて。しかし世界ではより一歩進んだ動きがみられると筆者は指摘する。 - 無印やユニクロの在庫管理はどう? アパレル業界が抱える「サイズ展開」と「需要予測」のジレンマ
アパレル市況は相変わらず厳しい。そんな中でも、カテゴリーにとらわれない拡張路線を走る良品計画の21年8月期第2四半期決算から課題点についてみていきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.