「美白」や「はだいろ」が消える 日本は世界の動きについていけるのか:根強いアジアの「美白信仰」(1/4 ページ)
花王が「美白」表現を取りやめると報じられた。この動きは多様性に配慮したもので国内企業では初めて。しかし世界ではより一歩進んだ動きがみられると筆者は指摘する。
花王が「美白」表現を取りやめるという。3月27日付の日本経済新聞朝刊では新製品の発売や既存品のリニューアルにより、数年以内に全ての商品で美白表現を削除することが報じられた。この動きは多様性に配慮したもので、国内企業では初めて。しかし世界ではより一歩進んだ動きがみられる。
2020年6月、英・ユニリーバなど欧米の化粧品大手が相次いで「美白」をうたう商品の販売停止や表記の変更を発表した。これはブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter、BLM)運動に端を発するもので、美白を意味する「ホワイトニング(Whitening)」などの表現が「白い肌が美しい」といったステレオタイプ(固定観念)を助長し、人種差別につながるという指摘に応えるものだ。
生まれ持つ容姿やスキントーンに対して、誰もがポジティブでいられる世の中に変わっていかなければいけない。そのため画一的な“美”の表現は、消費者から厳しい目が向けられるようになった。多様性のムーブメントの中で、従来当たり前に使用されてきたことが見直されているのだ。
美白表現の対応で先陣を切ったユニリーバは「ホワイトニング」や「ライトニング」「フェアネス」などの表現を撤廃。それに伴い、インド市場を中心にアジアで販売してきた「フェア&ラブリー(Fair&Lovely)」のブランド名を「グロウ&ラブリー(Glow&Lovely)」に変更した。さらに今年3月には「ノーマル(普通・標準)」という表現の廃止も発表。これらの表現を削除することで、美しさの定義をより包括的にしていくという。
ユニリーバの動きに追随した仏・ロレアルも、スキンケア製品で同様のワードの使用を取りやめると発表。2社の対応では、表現は変わったものの商品の効果は従来のままだ。
一方、米国のジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson&Johnson)はアジアや中東で販売してきた「クリーン&クリア」と「ニュートロジーナ」の美白シリーズの販売を中止するという、根本的なアクションを起こした。世界保健機関(WHO)のデータによると特に美白製品の人気が高いインドではスキンケア市場の約半分が美白関連で、4億5000万〜5億3500万ドル(約490億〜583億円)市場と推定されている。
関連記事
- ファミマのコスメは半年で30万本超の売り上げ セブンやローソンはどう対抗? コンビニが化粧品売り場に力を入れる理由
コンビニの化粧品売り場に異変が……緊急需要を満たす商品から新しいニーズに対応する商品へと変化している。なぜ化粧品売り場に力を入れるのか - バブルの名残 温泉街の「大型施設」が廃墟化 鬼怒川と草津の違いと「大江戸温泉物語」の戦略
コロナ禍がもたらす温泉街への影響は甚大だが、「温泉の魅力」として考えさせられるのが“街づくり”という点だ。筆者は「施設そのもので集客できる強い宿は例外的で、温泉地の魅力自体が集客を左右する」と指摘する。 - 「エヴァ」コラボは3日でほぼ完売 コスメブランドが「コナン」や「ワンピース」とコラボするワケ
カネボウ化粧品が展開するコスメブランドの「KATE」は2月、「エヴァンゲリオン」とのコラボ商品を発売した。最近はこうしたアニメやゲームと化粧品のコラボは珍しくなくなってきている。 - マンダム、38年ぶりにロゴマーク変更 社名フォントも一新
マンダムは5月11日、新しいシンボルマークを採用すると発表した。38年ぶりの刷新で、9月1日から順次導入する。 - 「40代の悩み」に絞った戦略で売り上げ2倍に マンダム「ルシード」ブランドの挑戦
化粧品大手のマンダムが40代男性に向け展開する「ルシード」ブランド。かつては若者向けのブランドだったが時代の流れから売り上げが低迷。回復への起爆剤として同社が取り組んだのが40代をターゲットにした戦略だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.