コラム
「美白」や「はだいろ」が消える 日本は世界の動きについていけるのか:根強いアジアの「美白信仰」(2/4 ページ)
花王が「美白」表現を取りやめると報じられた。この動きは多様性に配慮したもので国内企業では初めて。しかし世界ではより一歩進んだ動きがみられると筆者は指摘する。
アジアの「美白」は人種差別の要素をはらむものなのか
またWHOは、世界の美白製品の市場規模が24年に312億ドル(約3兆4000億円)に達すると見込む。その中で需要が大きいのが、美白信仰の根強いアジアである。
美白大国の韓国では、化粧効果で塗った瞬間に肌を白くみせる「牛乳クリーム(ウユクリーム)」など独自の美白製品が誕生。中国も伝統的に色白が美の基準で、近年流行ったインターネット用語「白富美」は、「肌が白く、お金持ちで美人」な女性が理想像だと表している。
中国は美容需要が急拡大しており、市場調査会社のiiメディアリサーチ(iiMedia Research)によると、20年の化粧品市場規模は3958億元(約6兆7500億円)だった。美白製品は年間660億元(約1兆1220億円)を売り上げている。さらに智研コンサルティングによると、中国の20〜50歳女性消費者のうち、80%以上の女性に美白ニーズがあったという。巨大市場で欠かせない人気カテゴリーとなっているだけに、企業のポートフォリオから美白製品を排除するのは難しい選択だろう。
そもそも、アジアの美白信仰は独自のものであるという主張も強い。日中韓では歴史的に美白文化があるため「白人に憧れているわけではない」と、今回の人種問題に関連した動きには反発の声もある。しかしアジアの美白信仰が人種差別的な要素を含まないとしても、美のステレオタイプを助長するものであることは間違いない。
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