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権利であるはずの「無期雇用への転換」を、多くの有期雇用労働者が希望しないワケ調査データから理由を探る(2/4 ページ)

働き手の権利の一つ、「無期転換ルール」。一見すると有期雇用より無期雇用の方が恵まれているようにも思えるが、このルールを希望する人は意外に少ない。なぜなのか?

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 NHKのニュースが参考にしたと思われる厚生労働省の資料「無期転換ルールと多様な正社員の雇用ルール等に関する実態調査の概況」には、無期転換を希望する人の理由が掲載されています。最も多いのは「雇用不安がなくなるから」(81.2%)。続いて多いのが「長期的なキャリア形成の見通しや、将来的な生活設計が立てやすくなるから」(55.6%)でした。


出所:同前

 それに対し、同資料では無期転換を希望しない人の理由も掲載されています。最も多いのは「高齢だから、定年後の再雇用者だから」(40.2%)。さらに「現状に不満はないから」(30.2%)、「契約期間だけなくなっても意味がないから」(20.5%)、「辞めにくくなるから(長く働くつもりはないから)」(15.9%)、「責任や残業など、負荷が高まりそうだから」(15.8%)と続きます。


出所:同前

 「高齢だから、定年後の再雇用者だから」がトップに挙がっている背景には、高年齢者雇用安定法の改正によって65歳までの雇用確保措置が職場側に義務付けられたことが関係していると思われます。ただし、一定年齢以上に限られた「特殊事情」だとも考えられるため、同資料に掲載されている「60歳以上の嘱託社員を除いた集計結果」を参照するとトップ5は以下の順になります。

1位:現状に不満はないから 38.3%

2位:契約期間だけなくなっても意味がないから 25.3%

3位:責任や残業など、負荷が高まりそうだから 22.2%

4位:頑張ってもステップアップが見込めないから 15.2%

5位:辞めにくくなるから(長く働くつもりはないから) 13.9%

※「その他」は除く


 1位は「現状に不満はないから」という理由です。確かに不満がないなら、あえて無期転換を希望しないという理屈は成り立つのかもしれません。しかし、現状に「不満はない」と「満足している」ではニュアンスが異なります。現状に不満はないからといって、現状に満足しているとは限らないわけです。

 同様に、「無期転換を希望しない」と「無期転換したくない」も、微妙にニュアンスが異なります。一見、働き手にとって有利だと感じられるのに、無期転換を希望しない人の方が多い原因を考察するに当たって気になるのは、無期転換することに何らかのデメリットを感じていて、無期転換したくないと考えているのかどうかです。もし、本音では無期転換したいと考えていたとしても、別の事情から無期転換を希望しない人がいるかもしれません。

 その観点から無期転換をしたくない理由を見直すとどうでしょうか。1位だった「現状に不満はないから」を見ても、不満がないからといって、必ずしも無期転換したくない理由にはならないと思います。「取りあえず無期転換しておこう」という選択肢もあるはずです。「現状に不満はないから」という理由には、何か釈然としないものが残ります。

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