日本組織に「金メダルかじり」的おじさんがはびこるワケ:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
「金メダルかじり」のような敬意の欠けた行いをする人はスポーツ界だけでなく、企業などにも存在する。自分より“上”の人にはできない言動を、“下”と見下した人にはしてしまう。このようなことはなぜ起きるのか──?
特に管理職などの役職に就くと、自分からコミュニケーションを取らなくても、部下から「報告」があがってくるので、コミュニケーション能力がなくてもなんとかなります。さらに、偉くなってくると、周りがヨイショ、ドッコイショの先回りコミュニケーションをしてくれるので、普段会わない人と会ったときに、何を話せばいいのか分からない。
その結果、「ええ旦那をもらって。まぁ旦那はええか? 恋愛禁止かね?」──といった愚かな質問しかできなくなってしまうのです。
厚労省が4月に公開したセクハラに関する調査でも、セクハラの多い職場の特徴として、「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」という点があげられていました。
また、16年の調査では、セクハラ経験者が少ない職場には「職場にはお互いを助け合おうという風土がある」「職場は意見が言いやすく風通しがいい」「職場のリーダーは社員間の業務分担などをよくマネジメントしている」といった特徴があることも分かっています。
「悪意なきセクハラ」をなくすには、「誰もが意見を言いやすい職場づくり」を行うこと。
そして、上に立つ人は、年齢や性別、国籍に関係なく「敬意を払う」という当たり前のことを身につけてほしい。人格を磨いてください。
どんな業績をあげようと、どんなに生産性を高めようとも、最後に問われるのは人間性です。大切なのは「その人がどんな人間であるか」だけなのです。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)がある。
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