日本組織に「金メダルかじり」的おじさんがはびこるワケ:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
「金メダルかじり」のような敬意の欠けた行いをする人はスポーツ界だけでなく、企業などにも存在する。自分より“上”の人にはできない言動を、“下”と見下した人にはしてしまう。このようなことはなぜ起きるのか──?
涙したのは女性だけではありません。男性たちの中にも「出世したけりゃ、早く嫁をもらえ」だの「まだ、子どもできないのか? 作り方知ってるのか?」だのと敬意なき暴言を浴びせられ、傷ついた人たちがたくさんいました。「笑ってやり過ごすしかない」という究極の選択を余儀なくされた人たちです。
そういう人たちのことを、1ミリも想像できない人たちがいる。「生きづらさ」という言葉の裏に潜むのは、「敬意のなさ」です。自分より“上”の人には絶対に言えないことを、“下”と見下した人には言えてしまうのです。
いずれにせよ、「悪意はなかった」「嫌がらせのつもりはなかった」という人たちの最大の問題は「コミュニケーション力の低さ」といっても過言ではありません。セクハラの多くが飲み会などで発生しているのも、「コミュニケーション力の低さ」が関係しているのです。
職場では、パワハラ、セクハラ、モラハラ、など、ハラハラだらけで部下とのコミュニケーションにビビっている“おじさん社員”が、自分のコンフォートゾーンである「飲み屋」に踏み入れた途端、職場でクローズしていたコミュニケーションの扉を全開する。が、何を話していいのか分からない。
そこで、つい「彼氏/彼女はいるのか?」というセクハラになりかねない発言をしてしまったり、下品なネタで笑いを取ろうとしてしまったり、カワイイ女性部下が素直に自分の話を聞いてくれると、「ん? ひょっとして……」などと“勘違い”してしまったり……。
その結果、「嫌がらせの認識は全くなかった」「最大の愛情表現だった」「あのときは非常にフレンドリーな感じだった」と、「だってだってあのときはさぁー」と悪意なきセクハラだったことを強調するのです。
日本のおじさんたちのコミュニケーション能力の低さは、かなりの問題だと私は感じています。
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