「ツイートを理由に退職処分」は適切だった? ホビージャパン問題から考える、社員の不適切SNS問題:働き方の「今」を知る(3/4 ページ)
転売を肯定するツイートが炎上した社員を退職処分としたホビージャパン。果たしてその処分は適切だったのか。また、社員のSNSを、企業はどのように管理すればよいのか。
その理由は、例え当該社員から「懲戒権らん用だ」「不当解雇だ」と訴えられたり、その裁判で会社側が負けて解決金を支払ったりする結果になったとしても、迅速に処分を下して取引先や関係者にケジメをしっかりつけなければ、会社存続が危うくなるレベルの厳重処分案件だったためと考えられる。
いくら「単なる一社員」のプライベートSNS投稿だったとしても、当該社員は「ホビージャパン編集者」と身分を明かしており、「社員の意見=会社の見解」と認識されるリスクがあった。加えて、不正転売対策に業界を挙げて取り組んでいる中、ホビージャパンは多くの玩具メーカーと取引があり、また自社でも玩具販売している会社の社員が転売容認発言をすることは、取引先各社から強い批判を招く恐れがあったといえる。
こうした、目に見えたリスクを適切に危険視して、相対的には「厳しい」と見られてもおかしくないような処分を下したホビージャパンだったが、処分が発表されて以降、炎上は沈静化し、騒動自体も終息している。リスクを負ってでも素早く対処した成果といえるだろう。
そもそも、会社はどこまで規制できるのか
このような事案を見て、「わが社でも不用意なSNS投稿を規制しなければ」と考える方も多いかもしれない。しかし、不適切な投稿に対して即座に懲戒処分を発動できるというわけではない。あくまで、必要なのは「周到な事前準備」なのだ。
そもそも会社が懲戒処分を行うためには、まず就業規則において「懲戒規定」を設け、「社員がどんなことをしたら懲戒されるのか」という「懲戒事由」を決めておかねばならない。従って、就業規則が存在しなかったり、存在しても懲戒規定や懲戒事由の記載がなかったりする場合は、懲戒処分を下すことがそもそも不可能なのだ。
加えて、今般のケースにあるような、第三者への誹謗中傷や情報漏えいにまつわるSNS投稿を抑止するものとしては、例えば次のような規定が必要になる。
第n条(訓戒、譴責、減給、出勤停止及び降格)
以下の各号の一に該当する場合は、譴責、減給、出勤停止、または降格にする。
-職務上の指揮命令に従わず職場秩序を乱したとき
-素行不良で、会社内の秩序又は風紀を乱したとき
-会社及び会社の従業員、又は関係取引先を誹謗もしくは中傷し、又は虚偽の風説を流布、喧伝し、会社業務に支障を与えたとき
-会社及び関係取引先の秘密及びその他の情報を漏らし、又は漏らそうとしたとき
もし、現在SNS投稿に関する規定がない場合は、今からでも就業規則の懲戒規定にSNS投稿も含めるように改訂することになるだろう。では、具体的にどんな内容で懲戒になるのか。
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