「ツイートを理由に退職処分」は適切だった? ホビージャパン問題から考える、社員の不適切SNS問題:働き方の「今」を知る(2/4 ページ)
転売を肯定するツイートが炎上した社員を退職処分としたホビージャパン。果たしてその処分は適切だったのか。また、社員のSNSを、企業はどのように管理すればよいのか。
懲戒処分の中では「懲戒解雇」が有名だが、その他「戒告、譴責」(口頭注意)、「減給」、「降格」、「出勤停止」といったものも懲戒処分に含まれる。
「どのような懲戒処分を設けるか」については基本的に各企業の自由だが、だからといって企業は「自由に懲戒できる」というわけではない。懲戒処分はあくまでも制裁罰であるため、懲戒の理由と処分内容のバランスを慎重に判断されることになる。例えば「遅刻を1回した」だけとか、「ちょっとしたミス」程度で懲戒処分を下すと、それは「懲戒権のらん用」に該当し、処分が無効となってしまう決まりがあるのだ。
労働契約法
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
実際、「退職処分」は厳しすぎた?
ホビージャパンが下した「退職処分」とは聞き慣れないが、おそらく懲戒処分の一つである「諭旨退職」のことと思われる。これは解雇相当の重大な規則違反ではあるが、懲戒解雇よりは幾分温情的な措置として行う処分である。双方の違いは次の通りだ。
懲戒解雇:即日解雇。退職金や解雇予告手当の支給はなく、離職票の離職事由にも「懲戒解雇」と記載され、再就職先にも懲戒処分を受けたことが明らかになる厳しい処分
諭旨退職:処分対象の社員に、自主的に退職届を提出するよう促す。自己都合退職扱いとなり、退職金も支給されることが多い。懲戒ではあるが、1段階軽い処分
とはいえ、諭旨退職自体が最も厳しいレベルの懲戒処分であり、本来であれば「刑事罰相当の罪を犯したとき」「重要な機密を故意に漏えいしたとき」「架空取引や不正会計で会社に損害を与えたり、信用を損なったりしたとき」といったレベルの問題行動に対して下されるものである。今般はそれが「プライベートSNS投稿」に対して下されたわけだから、「厳しすぎる」との意見も一理あるかもしれない。
恐らく本件は、そのような批判があることも想定の上で、あえて下したギリギリの判断ではないかと考えられる。ではなぜ、ホビージャパンは批判リスクを冒してまで、こうした厳しい処分を下したのだろうか。
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