『文春』と『新潮』が中づり広告から撤退、それでも車内広告に未来はある:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/7 ページ)
「週刊文春と週刊新潮が中づり広告を終了する」と8月17日報じられた。電車で中づりで政治や芸能の旬な話題がひと目で分かったものだが、スマートフォンの普及で下を向く人が増えた。確かに大手2社の撤退は転機になるだろう。しかし、中づり広告は廃れるかといえば、そうでもなさそうだ。
大手広告主「週刊誌」の撤退相次ぐ
電車の中づり広告は衰退するだろうか。週刊文春、週刊新潮とも、中づり広告の代表選手だ。大げさにいうと大手2社、その撤退はひとつの転機になるだろう。実は両者とも掲載路線は減っていたようで、報道によると週刊文春は東京メトロで毎回約1700枚程度しか掲載していなかった。ほかの路線でも見かけていたけれど、それは東京メトロの乗り入れ路線だ。
東京メトロの広告を扱うメトロアドエージェンシーの広告料金一覧表を見ると、1700枚のメニューは「丸ノ内線系、2〜3日間」だ。丸ノ内線のほかに、日比谷線、有楽町線、半蔵門線、副都心線がセットになっている。乗り入れ先は東急東横線と田園都市線、東武伊勢崎線と東上線、西武池袋線である。相互直通運転の隠れた効果というわけだ。
週刊誌の中づり広告減小の予兆はあった。振り返ると、14年に中づり広告減小を決定づける出来事があった。TBSの東京ローカル番組『噂の東京マガジン』の名物コーナー「今週の中吊り大賞」が終了し、「週刊!見出し大賞」に変わった。
「今週の中づり大賞」は、1週間に掲示された電車の中づり広告を一覧し、最も気になるテーマに「大賞」を進呈しつつ、注目したテーマを掘り下げていく。その週で大賞を受賞した週刊誌に★マークが与えられ、年間大賞を表彰していた。しかし、だんだん中づり広告を出す雑誌が減ったため、中づり大賞のままでは企画が成り立たなくなっていた。
総務省の情報通信白書平成29年版によると、12年に日本のスマートフォン普及率が5割を超えた。ちなみにNTTドコモによるiPhoneの販売開始は13年だ。中づり大賞の終了はその翌年にあたる。中づり広告減少とスマートフォン普及を関連付けて捉えられている。同白書の令和3年版では、スマートフォン普及率は8割を大幅に超えているという。電車に乗る人のほとんどがスマートフォンを持っている。
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