アイドルフェス「@JAM」仕掛け人に聞く「思い切って捨てる」覚悟:アイドルプロデューサーの「敗北、信念、復活、成功」【前編】(5/6 ページ)
コロナで禍で奮闘しているのがポップカルチャーフェス「@JAM」の総合プロデューサーの橋元恵一さんだ。橋元さんはソニーミュージックグループに在籍し、絢香さん、ケツメイシ、山崎まさよしさんなどのビジュアルプロデュースを務めた。橋元さんが42歳まで取り組んできたビジュアルプロデュースの舞台裏を聞いた。
突然の異動
――メンバーのバックグラウンド、グループ名と興味深いですね。しかし、そのような仕事をしている2010年、コンサートなどをマネジメントする部署への異動になります。どう思いましたか?
いや、びっくりしましたね。やりたくないというわけではなく、自分にとって未知の世界でした。音楽業界は何でもひとくくりにされがちなのですが、いわゆるマネジメントがやっていることと、レコード会社がやることは大きく違う仕事なのです。
当時の私の認識は、マネジメントの仕事は、タレントを管理し、コンサートをやり、グッズを作り、ファンクラブを作って、その収益を得るビジネス。一方、レコード会社の仕事は、CDを作り、宣伝をし、いわゆる音を売る仕事でした。そのため、コンサートの世界は近くて遠い世界でした。
――近くて遠い。音楽業界でマネジメントとレコード会社の業務はあまりつながっていないのですね。
いまでは、その辺りはシームレスになってきてはいますが、当時は役割分担されていることが多かったですね。アーティストのコンサートがあれば、私は当然足を運びますし、そのコンサートのチームとも連携はしています。ですが、一緒に何かを作っていくことはほとんどありませんでした。例えば、どういう衣装が良いか、誰に作ってもらえばいいかという仕事は担当する一方、コンサート全体がどう作られているかは、あまり興味もありませんでしたし、そもそも知る必要もありませんでした。
コンサートには、コンサートを制作する会社があって、その人たちがツアーのスケジュールを組んだり、コンサートの中身を作ったりしているので、やっていることは近しくても異なる世界の人たちだったんです。その世界に行ってこいと言うのが、この異動でした。本当に何も分かっていないというか、内科医が外科に行って手術することくらいに違う。そういう感じがしていました。
――同じ病院で働くけど、診療科が違うという感じですか?
そうですね。病院の中で内科のプロでも、急に外科に行けと言われて、何も分からない人に変わってしまう感じでした。今までの経験値ではないところから始めなければいけない。40歳を過ぎて、リセット状態で一からスタートを切ることには不安しかありませんでした。
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