トイレの個室に「使用時間」を表示 で、どうなったのか?:「実証実験」の結果(2/4 ページ)
首都圏のオフィスで、ある「実証実験」が行われた。トイレの個室に「他の個室の使用状況」と「滞在時間」を表示したところ、どういった効果があったのだろうか。システム開発を手掛けているバカン社の河野社長に話を聞いたところ……。
混雑解消に効果
このように書いても「そんな文言を表示したところで、効果なんてあるの?」と思われたかもしれないが、結論から言うと「あった」のだ。
2020年、とあるオフィスで実証実験を行ったところ、次のような結果が出た。センサーを設置しているトイレにエアーノックを導入し、その前後の状況を分析したところ、30分以上の利用が64%も減ったのだ。30分以上だけでなく、20分以上も43%減、15分以上も29%減と、混雑解消に役立っていることが分かってきたのだ。
実験で使われたトイレには個室が24室あって、月間(20営業日換算)でみると、359時間も削減できたことになる。このような数字を目にすると、会社の上層部は「なぬーっ! ゆ、許せん!」と怒りマックスになって、定期的に「使用中のトイレをノックせよ!」「担当者はお前だ!」などと決めてしまうかもしれないが、冷静になっていただきたい。
体調不良などの理由で、どうしても長時間利用にならざるを得ない人もいるので、個室にこもることが必ずしも悪いことではない。問題はスマートフォンの画面をじーっと見て、気付いたら長時間滞在しているケースだ。筆者は用を済ませればその場をすぐに離れるタイプなので、滞在時間は5分ほどだと思うが、バカン社の担当者に聞いたところ「30分以上利用している人はまあまあいる」そうだ。その理由として、圧倒的に多いのが、やはりスマホの利用だという。
それにしても、なぜ同社はこのようなサービスを開発したのだろうか。河野剛進社長に聞いたところ「子どもと一緒に商業施設に行って、飲食店を探したところどこも満席でした。探し回っているうちに、子どもが泣き出してしまいまして。こうしたつらい思いはしたくないなあ。限られた時間を大切にしたいなあ。このようなことを考えているうちに、“空き状況が分かる”サービスに価値があるのではないかと考えました」とのこと。
その後、飲食店の混雑具合を検知するサービスをローンチした。混み具合を知りたいのは、飲食店だけなのだろうか。トイレも行ってみなければ分からないので、「混雑を抑止できるようなサービスが必要ではないか」(河野さん)と考え、開発を始めたという。
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