別所哲也に聞く「企業ブランディングに映像が求められる理由」 急速に立ち上がった新市場:YouTubeだけじゃない(1/4 ページ)
俳優の別所哲也氏が主催し、21年で23回目を迎えた国際短編映画祭SSFF。企業のブランディングを目的とした映像だけを集めた部門BRANDED SHORTSには、コンサルティングブランドであるデロイト デジタルが今年からパートナーとしてスポンサードしている。ビジネス業界と映像業界との距離の変化を捉えていきたい。
ビジネス業界が映像業界に熱視線をおくっている。
企業が映像に存在意義を感じ、距離を縮めようとしている、と言ってもいいかもしれない。
2019年の末に話題になった1本の映像がある。『100 YEARS TRAIN』という相模鉄道の都心直通を知らせるものだがテレビCMではない。二階堂ふみと染谷将太の出演で3分半をかけて、さまざまな時代の車内が描かれる映像で、文字情報は「100年の想いを乗せて」「相鉄は都心直通」の2つだけ。公開されるとすぐにSNSで話題になり300万回再生を超え、ポジティブな感想で溢(あふ)れた。相鉄のブランディングに大きく貢献したと言っていいだろう。
この映像は、ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(以下SSFF)の1部門・BRANDED SHORTSに出品されている立派な“ショートフィルム”でもある。
SSFFは、俳優の別所哲也氏が主催し、21年で23回目を迎えた国際短編映画祭だ。企業のブランディングを目的とした映像だけを集めた部門として16年に設立されたBRANDED SHORTSには、コンサルティングブランドであるデロイト デジタルが今年からパートナーとしてスポンサードしている。
企業がブランディング手段としての映像に着目し、そこにコンサルティング会社までが、その可能性を見いだしている。ショートフィルムに魅了され、SSFFを長年続けている別所哲也は昨今のこの潮流の変化をどう感じているのか。そして、デロイト デジタルを展開するデロイト トーマツ コンサルティングの代表執行役社長・佐瀬真人氏は何を期待しているのか――それぞれに話を聞くことで、ビジネス業界と映像業界との距離の変化を捉えていきたい。
シリコンバレーで受けた衝撃
20年以上、日本でのショートフィルムとの接点の場としてSSFFを続けてきた別所哲也はこう語る。
「ショートショートフィルムの祭りをやっていると映像の未来地図が見えるんです」
別所とショートフィルムの出会いは90年代後半にまでさかのぼる。1998年のサンダンス映画祭に参加した別所は、従来の映画祭とは集まってきている人の種類が変わってきていることを感じていた。
「日本ではまだメアドというものを名刺に書き始めた時代」に、シリコンバレーの人々が、動画配信について話したり、ショートフィルムの配給権をその場で5000ドルのペイチェックを切って買ったりする様子に衝撃を受けたという。
ショートフィルム自体は、最初は「画家でいうデッサン画、ミュージシャンでいうデモテープ」のような形でクリエイターには登竜門的な形で浸透。ティム・バートンは『フランケンウィニー』や『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の原点となるようなものを、もともとは短編映画として作って才能が認められていった。
だがネット社会になって、登竜門的な位置付けだったショートフィルムに変化が起きる。「長編では表せないことがある」と著名監督がショートフィルムに戻ってきたり、ジョン・ウーがBMW出資のネット上のダイレクト・マーケティングツールでマドンナを主人公にショートフィルムを作ったり……別所自身「コンテンツビジネスに変化した」感覚があるという。
関連記事
- SDGsが経営にメリットをもたらす、これだけの理由 デロイトトーマツコンサルティング佐瀬社長に聞いた
SDGsという言葉が流行する前から貧困問題や環境問題に向き合ってきたデロイトトーマツコンサルティング代表執行役社長の佐瀬真人氏にインタビュー。話を聞くと、SDGsが経営にもたらすメリットが見えてきた――。 - 上場企業の「想定時給」ランキング、3位三井物産、2位三菱商事 8000円超えで「ぶっちぎり1位」になったのは?
上場企業の「想定時給」ランキング……。3位三井物産、2位三菱商事に続き「ぶっちぎり1位」になったのは? - 「年商1億円企業の社長」の給料はどれくらい?
「年商1億円企業」の社長はどのくらいの給料をもらっているのか? - ワークマン土屋哲雄専務が、社員の平均年収を700万円に上げた理由
「残業しない」「ノルマを設けない」「値引きをしない」「社内行事をしない」――。他社とは真逆の取り組みともいえる「しない経営」を実践し、10年連続で増収、最高益を更新したワークマン。後編では、土屋専務が社員の平均年収を、定期昇給分を除いて100万円以上アップさせた理由を聞く。 - 清水建設が仕掛ける「ニューノーマル時代のオフィス」 社員のタグから位置情報を可視化
大手ゼネコンの清水建設が、ニューノーマル時代の新たなオフィスの在り方を打ち出している。デジタル技術を活用して、リモートワークとコロナ禍に対応した、パフォーマンスの向上につながる「Shimz Creative Field」(シミズ・クリエイティブ・フィールド)を公開した。 - 勤続30年の元みずほ行員が斬る! もう一つの「年金2000万円問題」
「年金2000万円不足騒動」の発端となった金融庁の報告書で注目すべきだったこと――。実は現在の金融機関への痛烈な批判とも読み取れる。勤続30年の元みずほ行員が斬る! - 大前研一が「年金2000万円問題」を斬る! 終身雇用「崩壊」時代はこう乗り切れ
大前研一氏は、金融庁が出した「年金だけでは老後資金が2000万円不足する」という報告書を巡る議論について「ウソと誤解ばかりだ」と、喝破する。 - ひろゆきが斬る「ここがマズいよ働き方改革!」――「年収2000万円以下の会社員」が目指すべきこと
平成のネット史の最重要人物「ひろゆき」への独占インタビュー。ひろゆきの仕事観・仕事哲学を3回に分けて余すことなくお届けする。中編のテーマは「働き方」――。 - フィリピンで綱渡り人生 借金500万円から逃れた「脱出老人」の末路
フィリピンパブで出会った女性を追い掛け、借金500万円超を残したまま現地へ渡った「脱出老人」の末路――。待っていたのは不法滞在、困窮生活……。「海外で悠々自適なセカンドライフ」という美辞麗句とはかけ離れた一人の男の人生を追った。 - 2021年版「住みたい田舎」ランキング発表 コロナ禍で地方移住の熱高まる
宝島社は月刊誌『田舎暮らしの本』2月号で、「2021年版 第9回 住みたい田舎ベストランキング」を発表した。結果は? - 富士通「年収3500万円」の衝撃 ソニー、NECも戦々恐々の「グローバル採用競争」
「富士通3500万円」「NTTコム3000万円」「ソニー1100万円以上」「NEC新卒年収1000万円」――。優秀な人材を獲得するためにカネに糸目をつけず施策を展開する各社の危機感と焦燥。繰り広げられる採用“狂騒曲”の本質に迫った。 - 午後7時閉店でも店長年収1000万円超え! 愛知県「地元密着スーパー」絶好調の秘密
愛知県東三河地方だけに5店舗しか展開していない「絶好調」のスーパーがある。「社員第一主義」を掲げ午後7時には閉店しているのに、店長の年収は1000万円を超える。その秘密に迫った。 - 「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相
鳥山明氏の『DRAGON BALL(ドラゴンボール)』の担当編集者だったマシリトこと鳥嶋和彦氏はかつて、同作のビデオゲームを開発していたバンダイに対して、数億円の予算を投じたゲーム開発をいったん中止させた。それはいったいなぜなのか。そしてそのとき、ゲーム会社と原作元の間にはどのような考え方の違いがあったのか。“ボツ”にした経緯と真相をお届けする。 - 千葉県の住みここちランキング、2位「浦安市」を抑えて1位となった街は?
千葉県の住みここちランキングは? - 静岡県知事の「リニア妨害」 県内からも不満噴出の衝撃【後編】
静岡県が大井川の減水問題などを理由に、リニア中央新幹線の建設工事に「待った」をかけ続けている。なぜ静岡県知事はリニア建設を「妨害」するのか? 現地取材で浮かび上がった実態を前後編でお届けする後編。 - 日本の「都市力」ランキング 3位は福岡市、2位は大阪市……1位は?
森記念財団都市戦略研究所が発表した日本の「都市力」ランキング――。3位は福岡市、2位は大阪市……1位は? 東京23区のランキングは? - 全国の住みたい街ランキング 3位「東京都港区」、2位「札幌市」、1位は?
みんなの「住みたい街」全国1位に輝いたのは? - 2020年版「住みたい田舎」ランキング発表 若い世代の間で地方移住への関心集まる
宝島社が「2020年版 第8回 住みたい田舎ベストランキング」を発表した。移住定住の推進に積極的な市町村を対象に、移住支援策、医療、子育て、自然環境、就労支援、移住者数などを含む230項目のアンケートを実施。629の自治体から集めた回答を基に、田舎暮らしの魅力を数値化し、ランキング化した。その結果は?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.