別所哲也に聞く「企業ブランディングに映像が求められる理由」 急速に立ち上がった新市場:YouTubeだけじゃない(3/4 ページ)
俳優の別所哲也氏が主催し、21年で23回目を迎えた国際短編映画祭SSFF。企業のブランディングを目的とした映像だけを集めた部門BRANDED SHORTSには、コンサルティングブランドであるデロイト デジタルが今年からパートナーとしてスポンサードしている。ビジネス業界と映像業界との距離の変化を捉えていきたい。
「見たことのない世界観を描くには、映像が適している」
もともと、メッセージを伝えるのには適していたショートフィルムが、ネット社会によって企業と消費者のコミュニケーションが多様化する中で、より企業に求められるようになっていった――。広告代理店の好みそうな領域でもある。
佐瀬社長は「実は、コンサルティングファームが、広告代理店と直接コンペになるケースもあるんですよ」と教えてくれた。
「コンサルティングファームはクライアントの企業戦略、事業戦略を支援させて頂いており、これまでにないビジネスモデルや販売チャネルを提案することがあります。例えば直接消費者に販売したことがないメーカーがWeb上で商品を販売するなどという場合、サイトのデザインから、お客さまの買い物をするジャーニーを描くところまで含めて、全てが提案の範囲になるんです」
その“ジャーニーを描く”のにやはり適しているのが映像なのだという。
「誰も見たことのない世界観を描くには、やはり映像が適しています。言葉だけで書かれていては受け手ごとにイメージが異なってしまって社内でも社内外問わず意志が伝わりにくいですよね。自分たちのパーパス(※企業やブランドの存在意義のこと)を示すのにも映像が適しています。これまで株主に対しては、業績や株価といった数字だけ示していればいい時代がありましたが、今はそうではない。企業の実現したい世界観は、数字では示せなくて、その表現に映像が必要なんです」(佐瀬社長)
佐瀬社長「数字は見ない」
実はデロイトがデロイト デジタルを立ち上げたのは2012年。こういった領域に手を出し始めたのはここ数年の話だ。「完全なニューマーケットが5年くらい前から急速に立ち上がっている」と佐瀬社長も語る通り、この分野を、どの業界の管轄かという視点で考える事自体がナンセンスなのかもしれない。別所もその“融解”を感じている。
「いろいろな場所でシームレスなことが起きていますよね。例えばちょっと前までは僕らのような俳優がYouTube動画に出たら“落ちた”ように見られましたが、今はそうではない。広告したい側もテレビでマスに訴えるだけじゃ届かないことが分かり始めたから、ネットで伝えよう、となる。じゃあ、どういうふうに伝えればいいのか。ショートフィルムのようなストーリー性をもったもので伝えられる世界もあるんじゃないか……といった感じで必然として近づかざるを得なくなっているんだと思います」(別所)
今後も、デロイトのようなビジネス業界からの出資やスポンサードが増えてくることになりそうではあるものの、映像業界も玉石混交だ。デロイトの中でお金を出す基準をどのように設けているのかを聞くと佐瀬社長から返ってきたのは意外な答えだった。
「そもそも、今回のスポンサーシップは、文化事業の育成ではなく、中長期的にビジネスに貢献するものと位置付けています。だから、数字は見ないんです(笑)。もちろん、投資効果があるかどうかは経営会議を通しますが、最終的にはそれをやったときにどれだけ自分たちがワクワクできるかが大きいです。メンバーが『うちの会社って面白いことやってるな』と思ってくれるのであれば、それは数字では計れない素晴らしい価値ですよね」
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