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「振り回されたのはGoToに似ている」との声も 東京五輪はホテルに恩恵をもたらしたのか:瀧澤信秋「ホテルの深層」(3/6 ページ)
五輪開催で当初は不足問題も浮上したホテル業界。それが新型コロナウイルス感染拡大で一転、一気にネガティブな空気が支配した。多くの競技が無観客開催となったが、五輪はホテルに恩恵をもたらしたのだろうか。
「散々振り回されたのはGoToに似ている」
観客数の制限とは別に、五輪関連で白羽の矢が立つのが、大会関係者、選手団、メディア関係者の滞在先としてのホテルだ。大会組織委員会は、対象となるホテルを150施設程度に集約しているとされた。
大会前月の6月に都内の複数のホテルへ取材を試みたが、ホテル側から「貸し切りにするのか、一部提供という場合には他のゲストとの接触についてどうするのか」といった問題をはじめ、入国直後の隔離期間の受け入れになどついても不安の声が続出。組織委員会からの情報提供も不透明な部分があると困惑の声も聞かれた。
また、組織委員会からの要請による仮押さえで一般客の予約を断った中での五輪延期。直近でも大会関係者利用の情報提供が不透明で混乱するなど、「散々振り回されたのはGoToに似ている」「いまはワクチン接種を契機とした国内旅行ムードの盛り上がりに呼応すべく注力している」という支配人の声もあった。
翻弄(ほんろう)させられてきた五輪に対して、ある種クールなムードという印象であった。
ただ、改めて8月に取材を進めてみると、五輪関係者を受け入れたホテルでは水面下においてかなり活発な動きもみられ、受け入れていないホテルとの間には相当の温度差があった。
受け入れホテルからは、「大きな声では言えませんが……」と前置きした上で「かなり潤った」というの声も目立った。
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