解散“一転見送り”の菅政権、10月総選挙で株価はどう反応する?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
実は、衆議院選挙期間中は「株価が上がりやすい」という経験則がある。当初の見込みよりも早く総選挙が行われる可能性が一時的に高まったことから、駆け込み的な買いが入ってきた可能性がある。では、今回の解散総選挙によってマーケットはどのように反応するのだろうか。
三木内閣と菅内閣の意外な共通点
仮に今回の解散総選挙が任期満了解散になった場合、日本国憲法下では1976年12月5日の三木内閣以来の事例となる。では、三木内閣の総選挙時に株価はどのような反応をみせたのか。
76年は田中角栄元首相の関与したロッキード事件が明るみに出た年でもあり、当時の総選挙も「ロッキード選挙」などと呼ばれることになったという。当時は田中角栄元首相の汚職追及に積極的であった三木内閣であったが、その姿勢が各派閥の反発を招き「三木おろし」と呼ばれる党内の倒閣運動に発展している状況であった。その結果、選挙においても自民党の支持は当然伸びることなく、結党以来初の過半数割れという惨敗を喫してしまう。
しかし、株式市場はこの選挙結果で大きく株価を伸ばした。
三木内閣下の「ロッキード選挙」は76年11月15日に公示され、12月5日に投開票が行われた。株価の推移と比較すると、公示日近辺が底となり、投開票の翌日から大きく株価を伸ばしている様子が伺える。当時の日経平均株価は4600円近辺から4990.85円まで値を上げ、当時の年初来高値を大きく更新したのである。
三木内閣の政党支持率は、発足当初は概ね4〜5割程度で推移していたが、選挙直前には三木おろしの動きもあって30%台前半まで低下している状況だった。当時の株式市場は、与党の議席交代を政治腐敗懸念からのあく抜けとして好感したのである。
それでは、菅内閣はどうだろうか。菅氏は、安倍晋三前首相を半ば受け継ぐイメージ戦略で総裁選を勝ち抜き、就任時の支持率も60%を超える人気ぶりであった。しかし、コロナ対応や自粛ムードの中、オリンピック開催に踏み切った事などについての批判が根強い。毎日新聞・社会調査研究センターが8月28日に実施した世論調査では、内閣支持率が26%と内閣発足以来の最低値を大幅に更新した。
政党支持率の推移と、任期満了による衆議院解散総選挙の可能性という点で、三木内閣と菅内閣には意外な共通点がある。足元では「菅おろし」というワードも徐々に広がりを見せており、この点でも「三木おろし」との相関性をますます高めている。
そうすると、今回の衆議院選挙に関して仮に自民党が厳しい展開になったとしても、前例から考えればマーケットでは好感され株価はポジティブに反応する可能性がある。
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