2015年7月27日以前の記事
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ロードプライシングは成功だったのか? 大幅値上げを目論む首都高速の料金改定案高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)

渋滞、それも有料道路での渋滞が大嫌いな筆者にとって、オリンピックを機に割増料金が課されていたこの2カ月間は、振り返れば「1000円アップはむしろ割安だったかも」と思わせるような環境だった。しかし、だまされてはいけない。ロードプライシング制の正式導入に向けた実験的な施策なのだ、今回は。効果を認めてしまうと首都高速は「しめしめ」と思って正式導入に向けて動くに違いない。

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移動の時間短縮には価値がある

 そもそも高速道路とは、その名の通り高速で移動できる道路だ。つまり渋滞してしまうと、その価値をほとんど失ってしまうことになる。実際には渋滞部分が全行程の一部分であれば、渋滞で一時時間をロスしたとしても、トータルで時間短縮になれば高速道路としての役割は保たれるため、渋滞区間を我慢しているドライバーが多い、という状況のようだ。

 しかし実際には時間短縮になったのか怪しい状況も生まれる。お盆など帰省の時期には、何十キロもの渋滞が発生することが珍しくない。家族で荷物を伴っての長距離移動となると、列車や航空機などを使うのは大変という人が、クルマを使って渋滞に遭うことを覚悟で故郷へと向かう。

 首都高速や高速道路が将来的に導入を検討しているロードプライシング制は、交通量が多い時には料金を上昇させ、高速道路への流入を減少させるものだ。これによって渋滞の悪化を防ぐことで利用者の利益を確保する、というのが名目上の理由だ。これはロードプライシング(そもそも有料道路の時点でロードプライシングなのだ)というより、ダイナミックプライシングだろう。

 しかし今回のオリパラ開催時における首都高速のロードプライシング制導入は、オリパラ関係車両の移動を確実にするための渋滞回避策であって、一般市民に首都高速の利用を制限してもらうためのものだった。「首都高速を使ってくれるな」というメッセージの1000円アップであり、入り口閉鎖などの制限だったのだ。

 前述の通り筆者は、オリパラ開催期間中に往復8回程度、首都高速を最大額となる区間で利用したが、これぞ高速道路と思わせるほどの快適な移動を実現してくれた。

 しかし一般道はその分、渋滞していたかというと、そのような印象はない。緊急事態宣言中であり、オリパラの各競技は無観客で開催されたことから、人の移動が最小限に抑えられたことも影響したのだろう。価格を引き上げたことから首都高速を敬遠したドライバーが一般道に流出しても目立った渋滞は起こっていなかったようだ。(追記:ナビタイムが調査結果を明らかにしているが、規制開始こそ一般道での渋滞が目立ったものの、開催期間中の通過時間の増加は軽微であった。また期間中、何度かGoogleマップで都内の交通状況を確認したが、連日での目立った混雑は確認できなかった)。


慢性的に渋滞しているイメージの首都高速道路。環状線の整備などにより渋滞箇所や渋滞している時間は減少傾向にある。しかし渋滞緩和を値上げの理由にされるのは利用者としては抵抗がある。従来の料金を払って渋滞がない状況こそ、本来の高速道路であるからだ

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