ロードプライシングは成功だったのか? 大幅値上げを目論む首都高速の料金改定案:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
渋滞、それも有料道路での渋滞が大嫌いな筆者にとって、オリンピックを機に割増料金が課されていたこの2カ月間は、振り返れば「1000円アップはむしろ割安だったかも」と思わせるような環境だった。しかし、だまされてはいけない。ロードプライシング制の正式導入に向けた実験的な施策なのだ、今回は。効果を認めてしまうと首都高速は「しめしめ」と思って正式導入に向けて動くに違いない。
大幅値上げを目論む首都高速の料金改定案
首都高速は2005年までは道路公団であり、わずか10年ほど前までは料金も固定で東京区間700円(乗用車の場合、以下同)、神奈川区間600円というリーズナブルなものだった。
対距離制を導入してからというもの、一時は最大900円に値下がりしたが、現在は1320円(最高額としては固定料金時代とほぼ同等)にまで上昇、22年4月以降は最大で1950円へと、一気に1.5倍近くへと値上げされることが検討されているらしい。
これは首都高速を利用しているドライバーにとってかなりショッキングな情報ではないだろうか。企業にとっては交通費の負担増となるし、個人の出費としては往復で1200円以上の負担増になる。
首都高速を通過して周囲の高速道路へと向かう場合、首都高速を使わなければ大幅に時間が掛かることも珍しくない。時間短縮に首都高速の価値を見出すことは簡単だが、その代価が急激に値上げされようとしていることには、危機感を覚える。恐らく首都高速を利用するドライバーも同じ心境ではないだろうか。
この10年の間に都内で新たに開設された路線は、中央環状の山手トンネルくらいのものだ。大橋JCTには多額の建設費用が投じられたとは聞くが、通行量はこの10年ほぼ横ばい状態であり、大型車の割合は増えている。つまり通行料金の収入は増え続けているのだ。
利用台数が減少して収益が悪化しての値上げならまだ理解できるが、コロナ禍にあっても首都高速の収益はほとんど悪化していない。さらに民営化されても、料金収入で営利を追求しないという方針は変わっていないため、値上げは収益性の改善が目的ではないはずだ。
関連記事
- 高速道路の最高速度が120キロなのに、それ以上にクルマのスピードが出る理由
国産車は取り決めで時速180キロでスピードリミッターが働くようになっている。しかし最近引き上げられたとはいえ、それでも日本の高速道路の最高速度は時速120キロが上限だ。どうしてスピードリミッターの作動は180キロなのだろうか? そう思うドライバーは少なくないようだ。 - シフトレバーの「N」はなぜある? エンジン車の憂うつと変速機のミライ
シフトレバーのNレンジはどういった時に必要となるのか。信号待ちではNレンジにシフトするのか、Dレンジのままがいいのか、という論争もかつては存在した。その謎を考察する。 - アイドリングストップのクルマはなぜ減っているのか? エンジンの進化と燃費モードの変更
アイドリングストップ機構を備えないクルマが登場し、それが増えているのである。燃費向上策のキーデバイスに何が起こっているのか。 - なぜハイブリッド車のエンジン始動はブルルンと揺れないのか
純エンジン車であれば、エンジン始動時にはキュルルルとセルモーターが回る音の後にブルンッとエンジンが目覚める燃焼音と共に身震いのような振動が伝わってくるものだが、ハイブリッド車にはそれがない。それはなぜなのか? - トヨタTHSは、どうして普及しないのか そのシンプルで複雑な仕組みと欧州のプライド
前回の記事「シリーズハイブリッド、LCAを考えると現時点でベストな選択」を読まれた方の中には、こんな疑問を持たれた方も多いのではないだろうか。「シリーズハイブリッドなんかより、シリーズパラレルで万能なトヨタのハイブリッドシステムを他社も利用すればいいのでは?」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.