2015年7月27日以前の記事
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ロードプライシングは成功だったのか? 大幅値上げを目論む首都高速の料金改定案高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)

渋滞、それも有料道路での渋滞が大嫌いな筆者にとって、オリンピックを機に割増料金が課されていたこの2カ月間は、振り返れば「1000円アップはむしろ割安だったかも」と思わせるような環境だった。しかし、だまされてはいけない。ロードプライシング制の正式導入に向けた実験的な施策なのだ、今回は。効果を認めてしまうと首都高速は「しめしめ」と思って正式導入に向けて動くに違いない。

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都市高速と高速道路は本質的に異なる道路

 22年以降、首都高速が値上げする理由はこうだ。現在の料金は激変緩和措置のため上限を設けており、現在は35.7キロメートル走行時に料金の上限に達するが、新料金案では55キロメートル走行時を上限とすることを提案している。これが1950円の根拠だ。

 しかし筆者はそもそも、現在の首都高速の料金体系自体に疑問を感じている。というのもターミナルチャージを除いた距離毎の利用料金は1キロあたり29.52円というもので、これは首都高速に接続している高速道路の大都市近郊区間と同じものだ。

 つまり東名高速や東北自動車道、中央高速などと、首都高速は同じ料金を取られているのである。上限がなければ東名高速と料金が同じということに気付いているドライバーはどれくらいいるのだろうか。

 首都高速、と名は付いていても、それが高速道路ではないことを知っているドライバーは少なくないだろう。都心部を巡る内環状線の制限速度が時速60キロであることは、それを簡潔に示している。

 都市高速は都市内での移動を目的とした自動車専用道路であり、厳密には高速道路ではない。高速道路とは都市間を結ぶ、道路幅やカーブの曲率が大きな、設計速度の高い高規格幹線道路のことだ。

【訂正:9/13 13:20 *初出時、自動車道を自動車専用道路と記述しておりましたが、全国の自動車道も高速道路であり、さまざまな条件から最高速度が定められています。お詫びして、訂正させていただきます。お詫びし訂正いたします。】

 もちろん首都高速に周辺の高速道路が接続している以上、東京をまたがって移動する車両が少なくないため、首都高速には都市間移動の役割も大きい。だから渋滞が発生するのであり、その緩和のために圏央道や首都高・中央環状線などの都心部を迂回(うかい)するルートを整備してきたのが、この20年あまりの首都高速周辺の高速道路環境なのである。


15年度までの料金水準と、現在の料金水準(国土交通省の資料より抜粋)。首都高速は対距離制を導入するだけでなく、周辺の高速道路と同じ料金水準になっている。都市高速の性格からいって、これは割高といわざるを得ない

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