岡田武史監督が選んだ経営者という生き方 FC今治を通じて“チーム日本”を引っ張る:経営者・岡田武史【前編】(3/5 ページ)
あの「岡ちゃん」は今、経営者になっている――。サッカーワールドカップ日本代表の監督を2度務めた岡田武史。なぜ、岡田武史は経営者になったのか。「これからは物質の豊かさではなく心の豊かさを追う時代」だという岡田。本人に話を聞いた。
Jリーグチームの7割が赤字 FC今治は黒字
――確かに企業を経営していくうえで、理念は非常に大切ですね。岡田さんはどんな企業理念を掲げているのでしょうか。
「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」です。会社を始める時にいろいろな経営者に教えを請いに行ったら、皆さん「ビジョンや理念をしっかり作りなさい」と言われました。それで、いろいろな会社の企業理念を参考にしようと思って見てみたんですが、それもピンとこず、参考にならなくて。
個人的に45年間、環境問題にも向き合っていますし、そこも踏まえて自分で考えました。
今、コロナで、Jリーグのチームの約7割は赤字ですが、うちは黒字です。パートナー企業も、それぞれ苦しい状況であろう中、ほとんどスポンサードを降りるところがないんです。「うちも苦しいけどまたやるよ」と言ってくださるのは、最初のあのタオルの決断から間違っていなかった証拠かな、と思っています。
――そこから7年。ここまでやってきて感じたスポーツビジネスの変化はありますか。
スポーツビジネスというのは、これから大きく変わっていくと思います。今までは、「スタジアムをいかに満杯にするのか」が一番大きなテーマでした。スタジアムが満杯になってチケットが手に入らなくなると、パートナー(スポンサー)さんが持っているチケットの価値が上がる、という好循環があったんです。
でも、これからは、例えば、家でVRで360度カメラでいろいろな視点から見るほうがいい、という人も出てくるでしょう。家で見て投げ銭をくれる人がたくさんいれば、スタジアムは空いていてもいいのかもしれない。もしかしたら2000人限定だけどスウィートルームを作ったほうがいいかもしれない。
そうやって、楽しみ方にも多様性が出てくるわけで、それに対応できる形をわれわれは作っていかなくてはなりません。
――確かに楽しみ方は多様になってきていますね。
そうすると、スポーツビジネスとしてのマネタイズの仕方も多様になってきます。これまでのように、大きく露出すればいい時代でもない。パートナーとのアクティベーションや入場料以外の収入も考えていかなければならない。そういった動きは、ここ数年起き始めていました。コロナが背中を押して、その動きを加速しました。だから色んなものが大きく変わっていくと思いますよ。
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