米国株取り引きは日本株に続く柱になる 松井証券、和里田聰社長に聞く:金融ディスラプション(2/4 ページ)
日本初のネット専業証券である松井証券。カリスマ社長である松井道夫氏のあとを受けて2020年6月に社長に就任したのが、和里田聰(わりたあきら)社長だ。激動の証券業界において、松井証券の進む方向とは?
ゼロリスク信仰が問題
ーー投資の成功とは何でしょうか?
和里田氏 期待通りのリターンを得られたという成功体験だ。しかし、投資の経験がない人は「ローリスク・ハイリターン」を期待している。リスクとリターンの関係を説明し、理解してもらう必要がある。
そもそも日本人は、ゼロリスク信仰が強く、何事にも100%の安全性を求めがちだ。例えば、最近、AWS(Amazon Web Service)で障害が起きたが、AWSのSLA(Service Level Agreement)では99.99%の可用性が保証されているものの、100%を保証してはいない。グローバルには、この水準が十分に受け入れられているが、言霊の国である日本では残りの0.01%の障害可能性の方を注目しがちだ。そういったゼロリスク信仰の風土が投資についての考え方にも影響を与えていないだろうか。
投資に話を戻すとリスクとリターンの関係はすべて定量的にデータで説明しなくてはならないのに、数字をベースにした議論ができていないことが日本の課題。お客さまのリスク許容度と実際に購入した商品を数字で示すことが、科学的に理解してもらうことにつながる。期待値とのズレを解消していくことはできるはずだ。
松井証券のロボアドバイザーでは、投資信託のリスクをスコアリングして、お客さまが分かるように表示している。一番いいのは、業界全体で基準を決めて、その基準ごとに商品のラベリングをしていくことだ。統一された基準があれば、お客さまへのリスク説明は分かりやすくなり、投資の判断がしやすくなるように思う。
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