米国株取り引きは日本株に続く柱になる 松井証券、和里田聰社長に聞く:金融ディスラプション(3/4 ページ)
日本初のネット専業証券である松井証券。カリスマ社長である松井道夫氏のあとを受けて2020年6月に社長に就任したのが、和里田聰(わりたあきら)社長だ。激動の証券業界において、松井証券の進む方向とは?
他社のようなクレカ積み立てはできない
ーー松井証券は老舗のネット証券として、初期からの固定ファンをたくさん持っている。他方、投資初心者の若年層の比率も徐々に高まってきた。
和里田氏 当社の事業はオンラインが中心だが、シニアの方はコールセンターに電話してきて、ヒューマンタッチを求めている。若年層をどう取り込むかという話はあるが、ビジネスとしては、金融資産を持っている人がボリュームゾーン。そのためコールセンターを重視しており、対応力を高めている。
一方、若い人たちは電話をする習慣があまりなく、自分で調べて解決してしまう、またはチャットで軽く聞いて済ませてしまうという人も多いので、AIチャットボットを準備するなどして、年齢層に応じた対応をしている。若い人向けのコミュニケーション手段として、チャットなどの導線を整えるなどはまだまだ対応の余地はあるので、拡充させていきたい。
ーー若者の間では、インデックス投資の積み立てが人気だ。
和里田氏 十分な利益が出ているインデックス投信は数多くある。コストも安くなってきている。コストを気にされる人は、インデックス投信を選ぶケースが多いのではないか。特に若い人にその傾向が見られる。
楽天では、クレジットカードを使った積立投信のポイント還元が人気だが、日用品などの消費財ではないにもかかわらず、同水準のポイントをもらえるのでお客さまをひきつけている。楽天グループのビジネスは、ECプラットフォームを軸にした生活に密着したサービスを提供しており、その経済圏の価値最大化が目的であって、証券事業単体の価値を最大化することよりも優先されているように思う。したがって、私たちは真正面から同じことはできない。やったとしても半永久的に赤字になってしまい、長続きしないと思う。
他社を見るのではなく、お客さまを見ることが大事。私たちは自分たちの事業領域でお客さまと向き合い、勝負していくことを考えている。
2000万円問題にしても「資産構築が必要です」と急に言われても、やらなくてはいけない、恐怖心をあおられるだけでは、なかなかやる気は起きない。今の生活ですぐに困ることはないから、先送りにしてしまう。「難しい」「分からない」「怖い」という人が多いので、これをどうにか払拭しなければ、老後に向けた投資は喫緊の課題にはならず、なかなか進まない。
一つの解決案として、投資が趣味のようになってくるとよいのではないか。釣りや旅行と同じように、投資すること自体が楽しいと感じてもらいたい。セミナーでお客さまとお会いして、なぜ投資をしているのかを聞くと、「楽しいから」という答えが返ってくる。投資は学びがある、気づきがある、そして世界が広がる知的レジャーという面があるように思う。
だからこそ当社では、エンターテインメント的な要素を取り入れて、(タレントの)マヂカルラブリーさんを起用した動画など、楽しんで投資に取り組んでもらえる環境を用意している。それによって投資に興味を持ってもらい、投資を通じた喜びや豊かさを感じてもらえたらよいと思う。
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