SOMPOの挑戦 “管理職公募”時代に問われる「自由の両輪」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
SOMPOホールディングスが22年4月から、60ある全ての課長職を公募制にすると発表し、話題になっている。変化の激しい時代の中で、「自分から手を挙げて挑戦すること」はとても大事だ。しかし同時に、経営者が目を向けるべきものがある。
私は常々「自分から手を挙げることが重要」と考えていたので、公募制には200%賛成です。
SOMPOホールディングスの制度では、ポストに課せられたミッションがあり、未達成の場合は降格や賃金削減もあるとされています。しかし、人は「自分が決めたこと」であれば、しんどいことでも踏ん張るエネルギーを引き出せる。自分が決めたことであれば、困難な状況も「自分への挑戦だ」と受け止められます。
最近は「社員にストレスを与えてはダメ」とする風潮が広まっていますが、いつだって人を成長させるのはちょっとしたストレスであり、ちょっとした苦労です。ですから「自分にはちょっと……」とためらう気持ちがあっても、成長するチャンスだと捉えて「やります!」と手を挙げる人が増えればいいなと思っています。
その一方で、公募制にする以上、会社側には最大限のサポート体制を作っていただきたいと思います。必要なスキルを習得する機会の提供、ミッションを達成するために必要なリソースにアクセスできる権限、さらには、「失敗を許す」ことへの投資も必要です。
人は失敗する自由があるからこそ、全力で取り組めます。「自分で考えろ!」とは上司の決まり文句ですが、失敗しない限り学ぶのは無理。試行錯誤する中で考える力は高まっていきます。なので、会社側にはぜひとも、山あり谷あり、池ポチャありの経験ができる環境と、「失敗が言える」組織風土を作り上げる覚悟を持っていただきたいです。
そして、もう一つ「公募制=手を挙げる自由」を取る以上、「手を挙げない自由」を認める制度も作り、「新しいチャレンジ」だけを評価するのではなく、「続けること」も評価することが必要です。企業が「公募制」に期待する、社員の活性化と生産性の向上は、自由の両輪を生かすことでしか成し得ません。
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