社員に「自己犠牲による忠誠」を強いる時代の終焉 「5%」がもたらす変化とは:進む「脱・都心」(2/4 ページ)
企業が社員に「自己犠牲」を強いる時代が終焉を迎えつつある。背景にあるのは、企業と働き手の間にあるパワーバランスの変化だ。筆者は「5%」という数字に目を付け、今後の変化を予想する。
確かに、事業運営は「戦い」です。経済環境は変化が激しく、先が見通しづらい“VUCA”の時代と呼ばれるほどかじ取りが難しい状況にあります。一糸乱れぬ統制をとって市場を勝ち抜く中で、企業としては個々の働き手のワガママを受け入れているようなゆとりなどありません。働き手の力を結集し一丸となって進んでいくには、自己犠牲をものともしない強い忠誠心で会社に尽くす姿勢を求めることは理にかなっているといえます。それが働き手の志向とも合致しているならば、うまく機能する手法であることに違いありません。
実際に、今でも多くの企業は働き手に自己犠牲による忠誠を求め、その精神が組織統制機能の軸となっています。自己犠牲による忠誠は、これまで組織を支えてきた常識だったといっても過言ではありません。ところが、そんなこれまでの常識に疑問を感じさせるような出来事がいくつも見られるようになってきました。象徴的な事例の一つが、パワハラや過労によって大手広告代理店の社員が、自ら命を絶たなければならない状況に追い込まれてしまった事件です。
「美徳」か「危険な精神」か
これまでにも同様の痛ましい事件は何度も発生し報じられてきましたが、世間は会社組織の中で起こりうる不幸な事件として黙殺し、その痛ましさにフタをしてきた部分もありました。こうした出来事が許しがたい社会悪として強く認識されるようになったのは、社会全体の価値観が自己犠牲による忠誠を「美徳」と見なす方向から、時に命までも奪いかねない「危険な精神」だと見なす方向へと、シフトしてきたことを意味します。
また、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長だった森氏が、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」と発言し、女性理事にわきまえることを求めた一件で辞任に追い込まれたことも、社会全体の価値観のシフトを感じさせる出来事だったと思います。
価値観のシフトが社会全体で起きれば、当然ながら働き手の志向にも少なからず影響を与えることになります。
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