社員に「自己犠牲による忠誠」を強いる時代の終焉 「5%」がもたらす変化とは:進む「脱・都心」(3/4 ページ)
企業が社員に「自己犠牲」を強いる時代が終焉を迎えつつある。背景にあるのは、企業と働き手の間にあるパワーバランスの変化だ。筆者は「5%」という数字に目を付け、今後の変化を予想する。
これまでの会社組織においては常識で、無意識に諦めてきた事柄であったとしても、その常識に疑問を感じるようになると、意識して諦めようと努める労力が生じ、これまでストレスに感じなかった事柄に対してもストレスを感じるようになっていきます。
そんな社会全体の価値観のシフト、働き手の志向変化が徐々に進み、働き方改革推進の土壌が出来上がろうとしていた中で発生したのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。コロナ禍は、マネジメントの転換を伴わずうわべだけ“テレワークコーティング”するようなケースも含め、日本中の職場にたくさんのテレワーク事例を生み出しました。
9月11日、NHKは「新型コロナ 移住した会社員などの26%『都心に住む理由ない』 」と題したニュースを報じています。
ニュースの中で取り上げられている調査によると、今年6月までの3年間に別の都道府県へと移住した会社員などが20%で、そのうち26%が「テレワーク主体の働き方になり家賃が高い都心に住む理由がなくなった」と答えたそうです。
これまでは通勤することが常識で、住居も会社に通勤できる範囲内に構えることが当然でした。もしテレワークが可能だったとしても、それは補助的な働き方であり、あくまで通勤が基本だったはずです。今回の調査結果は、そんな常識が変わりつつあることを感じさせます。
テレワーク主体の働き方になったことで「都心に住む理由がなくなった」と回答した人の比率は、移住した20%のうちの26%なので、全体の中の5%強に過ぎません。しかし、5%という数字は社員数20人の企業であれば社内に1人、1000人規模ともなれば50人もいる計算です。さらに、まだ実行には移していないものの、同じような志向を持つ人となれば、その数はもっと膨らむことになるでしょう。
顕在化しているのは5%にすぎないとしても、背景には以前と異なる志向を持つ働き手が潜在層として多数眠っていることを考えると、この5%は大きなパラダイムシフトが起きる予兆かもしれません。だとすると、今後どのようなパラダイムシフトが想定され、それが採用市場にどのような流れを生み出す可能性があるのでしょうか。ポイントを3つ挙げて考察したいと思います。
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