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立民「年収1000万円以下所得税ゼロ」 1番トクするのは高収入の独身ビジネスマン?古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/4 ページ)

衆院選マニフェストの中でも目を引くのが、立憲民主党の掲げる「年収1000万円未満世帯の所得税免除措置」だ。立憲民主党の枝野代表は「経済を良くするには、分厚い中間層を取り戻し、あすの不安を小さくすることが大事」と発言しており、実現すれば家計の負担が減少すると巷でも歓迎する意見も散見される。

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所得低まるほど恩恵小さく

 そもそも、所得税の免除は年収帯別でどれくらいの恩恵をもたらすのか。まず、年収1000万円の給与所得者の納める所得税を簡単にシミュレーションしてみよう。一般的なモデルでは、給与年収が1000万円の独身会社員の場合、基礎控除や社会保険料控除が施された課税所得金額は約630万円となる。

 この金額を国税庁の所得税速算表に当てはめると、年収1000万円の給与所得者は、「630万円 × 23% − 63万6000円 = 81万3000円」程度の所得税免除効果を受けることになる。


国税庁の所得税早見表:自民党が昨年に実施した、全世帯一律10万円給付と比較すると、年収1000万円の給与所得者はその8倍ほどの現金を実質的に政府からもらうのと同じ状況となっているといえる。

 では、枝野氏が提言する中間層の恩恵はいかほどか。

 我が国における年収の中央値は、およそ370万円である。ここから種々の控除を適用すると課税所得はおよそ150万円前後となる。これを同じく所得税の速算表に当てはめてみると「150万円 × 5% = 7万5000円」ということになる。これが免除されても、一律10万円給付よりも少ない恩恵しか得られない。

 つまり、立憲民主党の掲げる所得税の免除は、高収入の者が最大限の恩恵を受け、枝野代表がこだわる「中間層」や、コロナ禍で収入が激減ないしは無収入となった人々には恩恵が小さいという「逆進性」をもたらすこととなってしまう恐れがある。

 枝野代表が「中間層」という言葉にこだわっているのは、ある程度公平な税負担を予期した超過累進課税という方式がとられている所得税の特徴を理解しているからだろう。つまり、所得が低い場合は自動的に税負担率が小さく、所得が高いほど高い税金を支払う性質が備わっている以上、そこに不用意なテコ入れを行うと消費税のように逆進的な施策となる可能性があるのだ。

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