「年功序列」で強い組織はつくれない。北野唯我氏が勧める「強みの経営」:根強く残る背景(6/6 ページ)
「年功序列はもう古い」――。このように言われてから、ずいぶん月日が経つが、いまだ多くの日本企業でこの制度が残っている。たくさんの人が「よくない」と指摘しているのに、なぜはびこっているのか。背景にあるのは……。
強みを磨く適切なフィードバックとは
「強みの経営」では、発見した強みを磨き続けることも重要となる。そして、強みを磨くには、他者からの適切なフィードバックによる分析がカギになるという。適切なフィードバックとは、どんなものだろうか。
「世の中には、相手の課題やできないことに的を絞った弱みのフィードバックがあふれています。しかし、それでは相手との信頼関係が構築されず、強みを伸ばすことにもつながりません。強みを磨くには、強みにフォーカスした内容であること、適切な時間軸を意識することが重要です。『将来どう強みを生かすべきか』という視点を持ちながら、『明日、1週間後、1カ月後の時間軸でできることは何か』を伝えるのがベストだと、僕は考えています」
実際に、強みにフォーカスしたフィードバックを続けたことで、社内のメンバーが飛躍した事例もあるそうだ。
「昨年、MVPを取得したあるメンバーは、空気が読めず協調性に欠ける点があり、他のメンバーとうまくやれていませんでした。しかし、研究肌で物事に対する熱中度が飛び抜けていたため、僕のチームに引き抜いて共同でプロジェクトを進めることに。彼には、『自分のことちゃんと知ってる? 君は天才だから』と伝え、自分の強みを自覚してもらうことから始めました。
最初は『え、マジすか』みたいな反応でしたが、徹底して強みにフォーカスしたフィードバックを続けるうちに、どんどん強みが尖っていった。十分な信頼関係ができてからは弱みのフィードバックもしましたが、強み3、弱み1ぐらいのバランスはキープしました。結果的に、MVPを取得するぐらいまで成長してくれました」
北野氏自身、作家として十分な実績を持ちながらも、365日中360日は文章を書き、年間50〜100冊の本を読むなど、強みを磨く努力を怠らないという。「強みの経営」とは、強みを分類し、強みでのみ評価し、強みをかけ合わせ、強みを磨き続けるという、徹底した強みのフォーカスによって成り立つ経営戦略だ。歴史上の名将たちが残した功績を見れば、その効果は明らかといえるかもしれない。
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