日本の“低賃金・人軽視”の悪夢 ブラック企業は「辞めたくても辞められない」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
コロナ禍で生活不安が高まり、ブラック企業を「辞めたくても辞められない」という人が増えている。ブラック企業には、従業員を低賃金で長時間働かせ、労働基準法を守らぬ企業も多い。「働く人にどう報いるか?」という点について、後れを取っている日本はこの先、どうなっていくのだろうか──。
ブラック企業だからすぐにでも辞めたい。でも、辞められない……。
こんな複雑かつやるせない、働く人たちの胸の内をあらわにした日本労働調査組合の調査が、話題になっています。
調査は「私の勤務先はブラック企業だと思う」と回答をした552人を対象に、9月中旬に行われました。退職を検討していると回答した人は全体の7割(68.7%)を占め、年代別には、20代が77.8%、30代が66.8%、40代が61.2%で、若いほど「離職意向」が高くなっていました。
同団体6月調査の、ブラック企業の「定義」を問う質問では、「サービス残業」との回答が断然のトップでした。
一方、今回調査の「辞めたい理由」では、4割弱が「給料が安い」(37.7%)と回答。「従業員を大切にしない」(30.6%)、「仕事量が多い」(28.2%)、「不当な人事評価」(24.3%)と続き、「サービス残業」は21.6%で、全体の7位でした。
要するに、サービス残業を平気でやらせるようなブラック企業では、まともな経営が行われておらず、給料が低く、社内の雰囲気も悪けりゃ、人間関係もギクシャクしてる、「終わった会社」なのです。
「会社を辞めていない、辞められない理由を教えてください」という問いには、「転職活動が不安」と答えた人が最も多く、全体の41.7%でした。次いで「生活が困窮する」(38.9%)、「家族を不安にさせる」(19.9%)、「同僚や関係者に迷惑が掛かる」(17.6%)と、コロナ禍で生活不安が高まっていることが明らかになりました。
やりきれない気持ちにさせられる理由が連なっていますが、転職市場の厳しさはさらに拡大する様相を見せています。
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