日本の“低賃金・人軽視”の悪夢 ブラック企業は「辞めたくても辞められない」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
コロナ禍で生活不安が高まり、ブラック企業を「辞めたくても辞められない」という人が増えている。ブラック企業には、従業員を低賃金で長時間働かせ、労働基準法を守らぬ企業も多い。「働く人にどう報いるか?」という点について、後れを取っている日本はこの先、どうなっていくのだろうか──。
労働政策研究所の調査で、2021年5月の企業の売上額を「コロナ前」の19年5月と比べた場合、52.1%の企業が「減少した」と答えました。一方「上回っている」と回答した企業は約2割の18.3%でした。
また、21年5月時点の売上額の水準が今後も継続する場合、「現状の雇用を維持できる期間」については、18.8%の企業が「1カ月〜半年以内」、12.9%の企業が「1年ぐらい」と回答。3分の1弱(31.7%)の企業で1年以内が雇用維持のリミットと考えていることが分かりました。
つまり、22年のゴールデンウイーク頃までに「コロナ前」の状態に戻れないと、大量の人員削減が行われる可能性が極めて高い。厚労省の調べでは、7月9日時点で新型コロナウイルス感染症の影響で仕事を失った人は11万326人に達し、うち非正規雇用者は5万3228人。つまり、非正規だけでなく正規雇用(正社員)の人たちにも魔の手は伸びてきています。
さらに、日経新聞によれば(9月26日朝刊1面)、20年度で約21万人の非正規雇用者、1万人強の正規雇用者が、上場企業から“消えている”とのことなので、実際には公表されている数の数十倍の人たちが仕事を失っていると考えられます。
いったいこの先、どうなってしまうのか。ごく一部の人たち以外は、細い綱の上を歩かされていて、風が吹くだけでぐらつき、突風が吹けば振り落とされる生活を強いられている。
「雇用の流動化」という言葉をお偉い人たちは好んで使いますが、果たして日本の経営者に「人を流す力」はあるのでしょうか。「どうせ辞めたくても辞められないだろ?」と、働く人たちをさげすむ悪徳経営者がまともな経営をせずに、社員に安い給料で長時間労働を科し、まるで奴隷のように扱っているのです。
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