「自動運転バス」実用化から約1年、茨城県境町の変化は?:自治体初(5/6 ページ)
2020年11月、自治体初の事例として自動運転バスを3台導入し、定時・定路線での運行を始めた茨城県境町。21年8月より停留所の数を16カ所に増やして、土日の運行も開始した。約1年間の実用化によって、町にどんな変化があったのか。
運賃無料の「ビジネスモデル」
上述したとおり、さかいアルマは運賃が無料であり、今後も運賃を徴収しない方針だという。現状は町の予算でまかなえているが、今後は新たなビジネスモデルの投入を検討しているそうだ。
「当社では、エレベーターを整備するのと同様の考え方で自動運転バスを導入し、運賃を徴収しない2つのビジネスモデルを提唱しています。『都心モデル』は、企業が家賃や共益費として自動運転バスの費用を100%算出するもの。『地域モデル』は、50%を国が補助、残りの50%を自治体が捻出。あるいは、国の補助、自治体予算に加えて、観光施設などが自動運転バスの一部費用を負担するものです。
境町で導入したいと考えているのは、この3者が費用を負担する地域モデル。これは自動運転バスを利用する顧客のニーズに基づいています。顧客は、移動手段にコストを割くより、移動した先でより多く消費したいはず。だから移動手段は無料で提供し、移動した先の施設などに『送客対価』として一部の費用を負担してもらう。住民が気軽に移動して、消費しやすい仕組みをつくれたらと思っています」
現状、境町で地域モデルの導入が決まったわけではないが、さかいアルマのルート上にある主な観光施設などは行政がコストを負担しており、町民が町おこしに協力的であることから、実現可能性が高いという。
さらに、今後はLINEと連携して、さかいアルマの予約のほか、店舗からの情報発信、クーポン配布、決済までをLINE上で行う仕組みも開発中だ。まだ稼働開始日は定まっていないが、これが動き出せば、購買行動の一連をデータ化できる。さかいアルマによる売上貢献を定量化し、クロスセクター効果(※)を算出することで、地域モデルを現実化したいというのがボードリーの狙いだ。
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