イクラ盛り放題は当たり前? ホテル朝食“激戦区”の北海道で見た驚きの朝食原価:瀧澤信秋「ホテルの深層」(4/5 ページ)
北海道では、リゾートホテルやビジネスホテルでも海鮮朝食が花盛り。その内容たるや「こんなに出してやっていけるのだろうか?」とこちらが心配になるほどだ。今回はそんな北海道のホテル朝食事情を見ていく
宿泊特化型ホテルの朝食原価
さて、道都札幌に場所を移し、楽天ランキング第5位にランクインした「ベッセルイン札幌中島公園」を見てみたい。全国の主要都市へ展開するベッセルホテルズ(広島県福山市)の運営で、朝食をブランドアイデンティティーの一つとして打ち出している。
朝食激戦エリア北海道の中でも札幌市内は、シティー・ビジネス入り乱れた朝食合戦の様相を呈しており、その中でも同ホテルは、楽天トラベルに限らず複数の大手宿泊予約サイトの顧客満足度でも平均で4.79ポイントと1位であった(2021年2月調査/札幌市)。
ベッセル“イン”という名の通り、完全なる宿泊特化タイプのホテルだ。大浴場も持たず、歓楽街ススキノの近くに立地していることから食に対する利便性は高く、夕食の提供もない。非日常的な利用がなされる温泉・リゾートタイプの高クオリティーホテルではないものの、差別化を図るために朝食に注力することは必然であった。
一般的に宿泊料金がローコストであるインだけに、朝食プランとして宿泊料金へブレークダウンできる部分も限られてくる。同ホテルの朝食定価は、宿泊者の場合1人1800円。気になる原価は、完全な宿泊特化型ホテルにしてかなり際立つ設定にしているといい、2020年10月〜21年9月のデータで、1242.5円/人だと説明してくれた。
ちなみに原価でないが、人件費は563.9円/人になるということで、対定価としては単純に100パーセントを超える計算になる。いやはや、ホテル朝食への飽くなき執念といったところか。ベッセルホテルズがブランドとして朝食に注力するのを見ていると、大手が席巻する宿泊特化型ホテルシーンの中で、後発ブランドとしての必死感もうかがえる。
一方で、ホテルの格・ブランドイメージと朝食クオリティーは決してイコールではない。特にビジネスホテルでは、数十店舗から数百店舗規模へと多店舗展開が進むにつれて、店舗間の差も目立つようになることは以前の連載でも述べた(無料朝食は除く)。「○○ホテル(ブランド)の朝食は良い」という感想は、イメージとして合っていても実態に即していないこともある。
現在全国で約30店舗を展開するベッセルホテルズだが、12月の「レフ松山市駅 by ベッセルホテルズ」(松山市)をはじめ、今後も出店が予定されている。クオリティー堅持は気になるところだ。
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