北海道のローカル線を盛り上げる位置情報ゲーム「テクテクライフ」、仕掛け人に聞く:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/11 ページ)
JR北海道の釧網本線が全通90周年を迎えた。記念行事の一つとして、地図塗りつぶしゲーム「テクテクライフ」を使ったデジタルスタンプラリーが開催。全国からゲームのファンが来訪するなど、この取り組みが沿線地域の活性化に貢献しているという。ローカル鉄道と最先端デジタル技術のゲームのコラボは、なぜ実現したのか。
杉山: スタンプラリーなら観光地巡りみたいな企画もできますね。
田村氏: でも我々はゲーム業界なので、自治体さんとのつながりはない。そんな時に「流氷物語×オホーツクに消ゆ」の東京側スタッフからウチの麻野一哉(テクテクライフ取締役ゲームクリエイター)にお声がけいただいたんです。麻野から「興味ある?」っていわれて、「めちゃめちゃあります!」と。それでWeb会議が始まって、という経緯です。
杉山: それで始まったコラボの第一弾が「テクテク網走めぐり」でしたね。
近藤氏: もともとは「オホーツクに消ゆ」をモチーフにした位置情報ゲームを作ろうとを考えてたんです。でもゲームをイチから作るとお金もかかるし、それでお客様が動いて、ちゃんと地域にお金が回るのか。ただ「こんなの作りました」ではお客様を呼べないだろうと。
杉山: 手っ取り早いのは紙のスタンプラリーでしょうけど。どこまで効果があるか分かりにくいでしょうしね。
近藤氏: テクテクライフさんとWeb会議を重ねる中で、例えば名古屋鉄道で実施された「テクテクエヴァめぐり」では、現地で掲示された文字列を入力しないとスタンプラリーのスポットにチェックインできないっていう仕組みがあると聞きました。現地に行ってチェックインだとそこまでですけど、店内で入力する方式なら消費につながる可能性が高まる。そこが魅力的でした。
そんな話を網走市内の飲食店、小売店、観光施設に話したら、ぜひやってみたいとおっしゃっていただいて。こちらからお願いしたわけではなくて「こういう話があるんだけど、どう思う?」って聞いたら「コロナで苦しい状況だし、ぜひやってみたい」と手が挙がったんですね。それなら地域をまとめて一緒に進めるべきだと。
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