サントリーの「ほろよい」はなぜ91種類もあるのか 商品開発のキモは2つ:週末に「へえ」な話(4/4 ページ)
サントリーの「ほろよい」が売れている。低アルコールのRTD市場でトップを独走しているわけだが、なぜ多くの消費者から支持されているのか。開発の背景を取材すると、2つのキーワードが浮かんできた。
「間口×ワクワク」で打率をアップ
「間口が広いかどうか」「ワクワクするかどうか」――。この2つの両輪がうまく回ればヒットの確率がアップするそうだが、では「冷やしパイン」の場合はどうだろうか。まず、間口について見てみよう。
春夏秋冬の中で、「夏が最も好き」という人は多い。暑くなると解放感が出てきて、海に行ったり、キャンプをしたり、バーベーキューをしたりして楽しむ人は多い。ということで、「夏を感じられるフレーバーを出せば、支持されるのではないかと考えました」(三枝さん)
とはいっても、まだまだ漠然としている。そこで、開発チームは「夏祭り」や「花火大会」などに着目する。「屋台で売っている『冷やしパイン』を食べたことがある人って多いですよね。共通の体験をもつ人がたくさんいればいるほど、多くの人の気持ちが動くのではないかと考え、『冷やしパイン』の商品化に動き始めました」(三枝さん)
季節のフルーツとして、夏に多くの人がパイナップルを口にする。というわけで「間口の広さ」は満たしているものの、ワクワク感はどうか。やや不足しているように感じたので、屋台で販売している「冷やしパイン」に落とし込むことで、ワクワク感を演出したのだ。
「ほろよい」の原理原則である「間口の広さ×ワクワク感」をきちんと守り、結果としてヒットした事例である。イジワルな質問をすると、これまで91種類も出していれば、想定よりも売れなかったフレーバーもあったはずだ。「『ワクワク』はあったけれども『間口』が狭かった。『間口』は広かったけれども、『ワクワク』が足りなかった。どちらかに偏っている商品は『ほろよいらしくないよね』と感じられ、苦戦することがありました」(三枝さん)
最後に、冒頭で紹介したノムさんの話に触れよう。「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という名言を、「ほろよい」にあてはめるとどうなるのか。数多くのフレーバーを世に出し、残念ながら売れなかった商品もあった。しかし、「苦戦した商品に不思議の商品なし」という視点に立って反省し、次の開発につなげていったようだ。
11月現在、「ほろよい」の定番は16種類ある。この数字は過去最高とのこと。「間口とワクワク」という掛け算によって、多くの消費者を心地よく酔わせてきたようだ。
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