そのHRテック、本当に役に立つ? 見落としがちな「課題」と「思想」:“真実”を見抜く人事戦略(10)(1/3 ページ)
人事関連の業務を効率化できるHRテックだが、実は導入に失敗する人事も多い。その失敗理由はどこにあるのだろうか? 見落としがちな観点について解説する。
熊谷豪(シングラー株式会社 代表取締役CEO/Founder)
1983年生まれ。明治大学卒業後、ベンチャーのモバイル広告代理店に入社し、人事採用業務に従事。2011年に人事採用の上流戦略を提案するHRディレクションカンパニーを立ち上げ、コンサルティングファーム、ITベンチャー、教育、食品会社などの採用チーム立ち上げ・再建を中心とした採用コンサルティング全般に携る。
2016年11月シングラー株式会社を設立し、面接CX(候補者体験)を高めて内定辞退を防ぐ「HRアナリスト」を発表。同サービスでエントリーした日本最大級のスタートアップカンファレンス「B Dash Camp 2017 Summer in Sapporo」で準優勝に輝く。「HRアナリスト」をコアとしたHR Techによる人材採用の変革を推進中。
「HRアナリスト」詳細はこちら。
近年、HRテックの市場が充実して、さまざまなサービスが「出そろってきた」という印象を受けます。
その分、企業の人事が新たなサービスを導入する場合、数多くある中から何を選ぶべきか、そもそも自社にHRテックを導入する必要があるのかについても、よく考えるべきでしょう。
HRテック導入の失敗事例
HRテックを上手に活用すると業務効率を改善できますが、実は導入に失敗する人事も多いのです。その背景として多いのが、「HRテックで課題を解決できるか」どうかという視点で吟味せずに、いきなり導入してしまうということです。
具体的な例では、「候補者に日程連絡をするならこのサービスがいいかな」となんとなく“業務ベース”で選んでしまうなど。また、新しいサービスが出てきた際に「取りあえず導入しなくては!」とよく考えずに飛びついてしまう人も多いです。
HRに限らず、ここ数年で「DX」という言葉を耳にするようになり、流行っているからシステムを導入しなければと飛びつく事例を多く目にします。しかし、そういった選び方をすると、HRテック導入後も全く課題が解決されないという状態が起きてしまいます。
テクノロジーを入れて、なんとなくWeb化されて便利になったような気がして満足しているうちに、現場から新たな”課題っぽいもの”が要望として挙がってくる。さらにその課題を解決するための新しいHRテックを導入しようとすると、既に導入しているものとのデータ移行や連携に余計なコストがかかってしまう……というのはよくあることです。
HRテックを活用すべきか悩んだら
では、どうすべきでしょうか。HRテックの導入を検討する際には、まずは自社の課題について考えてみましょう。
例えば、採用に関する課題は大きく2つに分けられます。1つは「オペレーション」、もう1つは「意思決定」です。
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