なぜ「JRE POINT」はここまで普及したのか、JR東日本のポイント戦略:鉄道のポイント経済圏(4/4 ページ)
かつては複雑な印象があったJR東日本のポイントサービスだが、2016年に「JRE POINT」が登場したことで、状況が一変した。なぜ、JRE POINTは現在ここまで普及し、ポイントがたまりやすくなったのか。
「ポイント経済圏」の確立
こういったポイント還元により、利用者が得をするだけではなく、同社にもメリットが生まれるようにしている。
6月27日の「えきねっと」リニューアルにより、えきねっとポイントとJRE POINTが1つになった。チケットレスサービスでの還元率は高く、「新幹線eチケットサービス」は2%、「えきねっとチケットレスサービス」などは5%となった。
えきねっとチケットレスサービスは、例えば新宿から特急「あずさ」で松本に行く場合や、東京・上野から特急「ひたち」でいわきに行く場合などには、特急券のチケットレスサービスと、「モバイルSuica」鉄道利用でのサービスを合わせると、かなりのポイントがたまるようになっている。新幹線のチケットレスサービスは、普通にきっぷを買うよりも安く設定されている。
同社はJRE POINTとモバイルSuicaをフル活用して、ポイント還元で利用者がお得になるだけではなく、自社の券売機や自動改札機のメンテナンスなどの省力化を推進、ネットでの特急予約などを行うように誘導している。JRE POINTを利用して、利用者の行動を動機付けるように働きかけているのである。
駅ナカ施設や通販でもポイントをためることができ、ビューカードの利用でもポイントがたまる。「ポイント経済圏」を確立させることで、Suicaへ、特にモバイルSuicaへ、そしてネットの活用へと、利用者を動機付けるシステムを整えている。
ためる、使う。この繰り返しを利用者に行わせることで、同社はユーザーへのアプローチが上手になる。さまざまな企業がポイントシステムを戦略的に活用している中、同社のポイントシステムは、かなり優れているのではないだろうか。
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