広い売り場と大きな看板の店舗を劇的に“縮小” 洋服の青山が導入する「デジタル・ラボ」の威力:店舗を見て分かったこと(2/4 ページ)
近年、実店舗とオンラインを融合させたOMO型店舗の出店が加速。2016年から開発に力を入れているのが「洋服の青山」を展開する青山商事だ。独自で開発した「デジタル・ラボ」の導入を進めている。
広い売り場なのに「自分に合うサイズはこれだけ?」を解消
従来の店舗では、基本的にさまざまなブランドの商品をサイズごとに展開していた。例えば「YA体(スリム)の5号(170センチ)」「AB体(がっちり体)の6号(175センチ)」といった形で分けられ、体格を測った上でそのハンガーラックから好みの色や柄の商品を試着するといった流れだ。
一方で、「こんな広い売り場なのに私の体形に合う商品はこのラックだけにしかないの?」といった印象を持っていた人も多いのではないか。
デジタル・ラボを導入した店舗ではその陳列方法も一新。商品はブランドごとに並べ、「AB体の3号はグレー」「A体の4号はストライプ柄」といったように、品番ごとに一つのサイズのみを展示している。
販売員の接客を受けながら、好みのブランドのコーナーで実際の商品を試着し着心地やサイズ感を確認し、デジタル・ラボで自分に合うサイズや柄の商品を注文するといった販売方法を採用。購入した商品は補正後に自宅へ配送される仕組みとした。もちろん店内の商品をそのまま購入することもできる。
同社のEC事業部 内山敬EC企画グループ長によると、サイズ別からブランド別に陳列方法を変更したことで、よりお客好みの商品が選べるようになっただけでなく、リピート客の獲得や、店舗とECサイトの両方を利用する“併用顧客”の拡大にもつながるとしている。
「これまでの陳列方法では『洋服の青山で買ったスーツ』ということは覚えていますが、スーツのブランドまでは覚えていないお客さまが多かったと思います。ブランドごとにまとめることで、その特徴や名前がより印象的になり、2回目以降は、ECサイトでブランドを指定して購入する流れにつながっています」( 内山氏)
さらにデジタルラボには、画面上で「選択したス―ツに合うネクタイ」といったコーディネートを試したり人気商品のランキングを表示したりと、販促につながる機能を搭載。商品の細かい柄などを確認しやすくするため、大きめのサイネージを採用している。
店舗で保管する在庫数の約3分の1〜4分の1を削減。商品は神奈川県大和市にある物流拠点で補正、配送を行うため、これまで店舗ごとに構えていた「補正室」のスペースも省くことができ、商品を陳列したり補正した商品を受け渡したりする作業も減少した。デジタル・ラボの導入は従業員の負担軽減にもつながったとしている。
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