車検制度はオーバークオリティー? 不正も発覚した日本の車検の意義:高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)
自動車メーカーが、生産工場からの出荷時に行う完成検査で不正をしていたことが明らかになったのは2017年のことだった。そして今年は、自動車ディーラーでのスピード車検で不正があった。日本の乗用車に関する法整備は昭和26年(1951年)に制定された道路交通法、道路運送車両法によって始まっている。その中には幾度も改正されている条項もあるが、全てが実情に見合っているとは言い難い。
ロボット化しつつあるクルマにふさしい車検制度を
2024年10月からは従来の検査項目に加えて、OBD(車載式故障診断装置)を利用した電子的な検査項目が加わることになる。すでにディーラー整備の現場では、高性能な診断機を利用した故障診断や部品交換が常識化しており、今後はますますメンテナンスフリーと整備の電子制御化が進むはずだ。
さらに75歳以上の高齢ドライバーは、免許更新時に交通違反者だけ実技検査を受けることが加わり、サポカー限定免許の交付も始まる。実技検査で不合格になった高齢ドライバーでもサポカー限定免許ならば交付される、というものではないが、運転への不安からサポカー限定免許を選択する高齢ドライバーは増えるだろう。
サポカー限定免許と車検制度はまったく関係なさそうに思えるかもしれないが、高齢ドライバーが運転を続けるにあたり、サポカー限定免許を選択するようになってくれば、クルマの代替えも進むことになり、車検制度の実態にも影響を与えるのは間違いない。
OBD検査の導入だけでなく、初年度から3年の新車の有効期限をさらに延長したり、点検や検査の項目も見直したりしていくなど、クルマの品質向上や人手不足を考慮した作業内容へとスピード感を持って改めることも必要だ。
電動化により、クルマはさらにメンテナンスフリー化が進んでいくことが予想される。ということは車検整備も自動運転技術同様、クルマの安全性を維持していくのが自動車メーカーの責任が大きくなっていくことになる。このあたりの責任問題をどうしていくか、中国など新興EVメーカーの日本市場進出にも大きく影響を与えそうだ。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。企業向けやシニア向けのドライバー研修事業を行う「ショーファーデプト」でチーフインストラクターも務める。
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