白熱する「無人レジ競争」の行方──ショッピングカート式の勝算と課題は?:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(1/4 ページ)
小売店のレジの無人化にはさまざまな種類がある。その中の一つが、ショッピングカートにレジ機能を搭載する形式だ。日米で広まるショッピングカート式のレジの勝算と課題とは?
連載:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線
小売業界に、デジタル・トランスフォーメーションの波が訪れている。本連載では、シリコンバレー在住の石角友愛(パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー)が、米国のリテール業界の最前線の紹介を通し、時代の変化を先読みする。
前回の記事では「Amazon Go」の技術をライセンスした「Just Walk Out」の事例を紹介しましたが、レジの無人化には他にも種類があります。例えば、ショッピングカートにレジ機能を搭載するのがその一つです。そこで、今回はレジ機能付きショッピングカート事業についてご紹介・考察したいと思います。
最近、日本でもレジ機能付きショッピングカートが話題になっています。例えば、福岡に本社を持つ小売りチェーンの「トライアル」では自社の大型店舗(スーパーセンター)を中心とした35店舗にレジ機能付きショッピングカートを導入し、2021年6月時点で約4000台が稼働しているとのことです。
このように、リテール企業が中心となってレジ機能付きショッピングカートを開発するメリットはたくさんあります。レジ待ち時間の短縮はもちろん、顧客が入店の際にカート上で会員カードをスキャンすれば、カート上の画面を使ってより顧客にパーソナライズしたおすすめ商品が提案できます。
また、不要となるレジエリアに商品棚を追加すれば、店舗内スペースの有効活用にもつながります。さらに、カート上の画面をデジタルサイネージとして利用すれば、リテール企業にとって新たな広告ビジネスにもなるでしょう。
しかし、米国ではスーパーなどのリテール企業自体よりも、リテール企業に付加価値を提供するポジションにいる企業がこのようなサービス強化の手法を事業にするケースが目立ちます。
例えば、スーパーマーケットの買い物代行をしてくれるインスタカートです。インスタカートは日本のウーバーイーツのようなデリバリースタートアップに類似するビジネスモデルで、買い物代行をするたくさんのショッパー達をネットワーク化しています。アプリを通して顧客が特定のスーパーから商品を購入すると、ショッパーがスーパーに行き、商品をピックアップし、顧客の家まで届けてくれるものです。
デリバリーアプリ会社がなぜ、レジに参入?
なぜ、デリバリーアプリ会社がリテール企業への価値提供にこだわるのでしょうか? 理由としては、リテール企業が内製化したデリバリーアプリやサービスを立ち上げることへの脅威、競合デリバリーアプリとの差別化があります。
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