2年の猶予ができた今こそ、電帳法はインボイスを見据えて準備を進めるべきワケ:帳票ベンダー大手に聞いた!(2/4 ページ)
2021年12月11日、来年1月1日より施行される電子帳簿保存法(以下、電帳法)の「電子取引」義務化に2年の猶予が設けられることが正式に発表され、話題になっている。思いがけず対応スケジュールにゆとりが出てきた今こそ、あらためて考えたい、電帳法×インボイス制度対応へのベストプラクティスとは?
インボイス制度をおさらい! 具体的に何が変わるの?
まずはインボイス制度とは何か、簡単におさらいしてみよう。ウイングアーク1stのCustomer Success部 法対応Gに所属する小野優貴氏はインボイス制度について、「一言で言うと、消費税の仕入税額控除に関する新しい制度です」と説明する。
「企業がビジネスを進める上では、売り上げで“預かる”消費税と、仕入れで“支払う”消費税が発生します。仕入税額控除は、預かった消費税から支払った消費税を引いて、差額を納税する仕組みになっています。
インボイス制度が導入される23年10月以降は、今までのように仕入税額控除を受けるためにはインボイス――日本では『適格請求書』と呼ばれるものが今後必要になります」(小野氏)
売り上げ額から納税して、仕入れ時の支払額からも納税すれば二重課税になる。仕入税額控除は、それを防ぐために設けられているものだ。
現行の請求書は「区分記載請求書」と呼ばれており、今までは仕入先からこれを受領することで仕入額控除を受けられたが、インボイス制度が導入されるとインボイス(適格請求書)をもらわなければ仕入額控除の対象外となる。そのため、今後企業は「適格請求書を発行できるように、または逆に受領できるように準備をしていく必要がある」(小野氏)というわけだ。
課税事業者になるしかない? BtoB事業の免税事業者は……
適格請求書は、主に以下の記載事項を満たしている必要がある。(1)の「登録番号」とは、適格請求書発行事業者として事前申請をすることで付与される番号。登録申請の受付は既にスタートしており、申請できるのは課税事業者だけだ。
「仕入先である適格請求書発行事業者は、買い手である取引先(課税事業主)から求められた際、適格請求書を交付しなければなりません。適格請求書を発行できるのは、登録申請を済ませ登録番号を持つ課税事業者だけです。
インボイス制度施行期限である23年10月1日から適格請求書を発行するためには、その半年前までに登録事業者の申請を行う必要があります」(小野氏)
課税事業者であれば、登録申請をして、請求書フォーマットを適格請求書仕様に直せばいいだけなので話は早い。しかし、免税事業者だった場合は、課税事業者になるか、免税事業者のままでいるか検討する必要がある。
免税事業者は「簡易課税制度」を利用するのも手
課税事業者になる場合は、23年3月31日までに登録申請をすればよい。通常、免税事業者が課税事業者になるためには、その前に「消費税課税事業者選択届出書」を出さなければならないが、インボイス制度導入に当たって“23年3月31日までに登録申請を行う”場合は、「届出書を提出しなくても、登録を受けられる」(=登録を受けた日から課税事業者になれる)というルールに変更された※1。
※1 国税庁「インボイス制度に関するQ&A」内「問7」より
とはいえ、課税事業者になればその後の事務作業は免税事業者時代よりも増えるのは明らかだ。その点について、ウイングアーク1stの執行役員を務める名護屋豊氏(Business Document事業部 副事業部長)は、「簡易課税」というキーワードを出し、以下のように説明する。
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